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遥か群衆を離れて

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Far from the Madding Crowd (2015)


トマス・ハーディ原作のドラマ。これは6話くらいのドラマにすべきなのでは……? と思うくらいよい映画だった。
お話がはじまっていきなり羊飼いのガブリエル(マティアス・スーナールツ)から求婚されたバスシーバ(キャリー・マリガン)が、教師の職はあるから収入の心配はない。結婚願望も持っていないから、わたしはひとりで生きていきます、ときっぱり言いきるので、この時代にはたぶん珍しい、とても自立した女性なんだな、ということが分かるのだけど、亡くなった叔父の遺言で受けつぐことになった農場の女主になってからも、朝早くに起き、まじめに働き、雇っている人々へも毅然とした態度を取り、きちんと働く者にはそれに見合った賃金を渡し、そうでない人はクビにするという女性で。彼女をサポートするリディとの相性もよいし、見ていて気持ちよかった。
で、ガブリエルはというと、財産である羊をすべて失い(大量の羊が全部崖から落とされて死ぬシーンはけっこうショックだった)、職を求めてあちこち旅してたら、農家の火事に出くわして火消しに奮闘、無事消火したあと礼に現れた農場主がバスシーバだったという、いやそんな偶然があるかい、などと思うのですが、そういう展開にならないと話が進まないのでそれは脇に置いといて。

で、ガブリエルとは別に、勤勉に働くバスシーバの姿に、農場の隣に住むボールドウッド(マイケル・シーン)が一目ぼれ。おまけに、リディとの賭けに負けて、バスシーバがボールドウッドにバレンタインのカードを贈ったことで、勘違いをしたボールドウッドはバスシーバにプロポーズ。そりゃ愛の言葉が綴られたカードを受けとったら誰でも勘違いしますって。ここ、バスシーバはちょっと軽率だったし、ボールドウッドさんは気の毒でした。
でもね、自分はもう歳だから、でもあなたのことは大切にします、たとえあなたの心が私に傾かなくても……と控えめに言うボールドウッドがいじらしくてめちゃめちゃ良かったんですよ! ピアノも買ってあげますって、ようするにあなたの望むものはすべて与えたい、その財力もあるよと暗に言うボールドウッドに、ピアノはもう持っているんです、とバスシーバが控えめに伝えると、ちょっとだけ恥ずかしそうな照れたような顔がなんとも言えなくて。彼、土地も資産もふんだんにある金持ちなんだけど、決して金の力で強引にバスシーバを得ようとはせず、それどころか、自分に対して恋心を抱かなくてもいいから結婚してほしい、っていうのがたまらん。

ガブリエルとボールドウッド、どちらの求婚も断り、つとめて冷静なバスシーバなのに、ポッと出のこいつ絶対ダメな男だってひと目で分かるトロイ軍曹(トム・スターリッジ)に恋に落ちてしまうバスシーバ。見てるこっちは、えー! なんで!! て思うんだけど、まぁバスシーバもあとから彼との結婚は失敗だったと認めたように、今まで周りにいなかった、危険なにおいのする男に惹かれちゃったのかな。
まぁそんなトロイとの結婚生活がうまくいくはずもなく、いろいろあって彼は入水自殺、でも死んだと思われていたトロイがクリスマスの夜にとつぜん姿を現し、強引にバスシーバを連れて行こうとするのをボールドウッドが射殺したのですが、ここもすごく唐突に起こったことでびっくりしたけれど、ボールドウッドがそういう行動に出るまでの心の揺れとか葛藤なんかが見たかったな。
ガブリエルとボールドウッドは恋敵ではあるけれど、農場の経営という共通点では意見が合うのかな、ボールドウッドのほうからガブリエルに「共同経営者にならないか」と持ち掛けているし、ふたりのあいだに友情かそれに似たものがあったのかなと思うと、その心境の変化を丁寧に描いてほしかったよ~。
とにかく話の展開が早い早い。原作読んだことないのでちょっと分かんないのですが、たぶんイギリスの厳しい自然(冒頭で海が出てきたし、しじゅう風が強い地域みたいだし)を背景に、壮大なスケールで繰り広げられるメロドラマ(多分……)だと思うので、そういう意味でもぜひ6話くらいのドラマで見たかったなと思ったのでした。


ガブリエル役のマティアス・スーナールツ、この映画で初めて知った俳優さんですが、顔はライアン・レイノルズやライアン・ゴズリングに似てるのに、でも声はマッツ・ミケルセンにめちゃめちゃそっくりで。見ててじゃっかん脳が混乱してんんん!? てなりました。声、似てません? 似てないかな……。
キャリー・マリガン、とても細身の身体なんだけど、芯の強い女性バスシーバ役にすごく合ってたし、チェック柄やデニム生地のワンピースもすごくよく似合ってた。

監督は「偽りなき者」のトマス・ヴィンターベア。
1967年版も見てみたくなりました。

グッド・ドクター シーズン2

The Good Doctor Season 2 (2019)

今日、4月2日は自閉症啓発デー、そして毎年4/2~4/8は、発達障害啓発週間とのことです。

今シーズンも楽しく視聴しました。物語がゆっくり進むのは前シーズンと変わらずですが、エピ数が増え、メンバーの個性も際立ち、最後まで興味深く見られました。でもショーンの天才的なひらめきや、彼の脳内イメージがTV画面上に視覚化されて、患者のどこになにが問題あるのかを見つけるシーンが、このシーズンはちょっと少なかったかな。シーズン3ではその演出をぜひもっと増やしてほしいです~。

でも正直に言うと、このドラマって各エピソードに登場する患者のキャラクターの掘り下げがやや浅いのと(1エピ完結ものだから、しかたないかな……)、S1のメレンデス先生の彼女の再登場は結局なかったし、アンドリュース先生と妻との不妊の問題はS2ではいっさい出てこなかったのも、なんだかなと思いました。
あと、クリスマススペシャルの2話に渡って病院内で未知のウィルスが流行った話。レズニックに好意を抱いていた男性の救急隊員がそのウィルスに感染して死亡してしまうのだけど、彼、このエピで突然登場していきなりレズニックに恋心を打ち明け、すぐに亡くなってしまうというのがあまりにも唐突で、全然感情移入できなくて(なので悲しみの度合いも低い)。せめて彼が準レギュラーとかで過去に何度か登場してたら、もうちょっと違った受け取り方になったのになぁと思いました。このエピ見ごたえあったので、なおさらもったいなく感じました。

でもこのドラマ、メンバーがどんな組み合わせでも相性が良くて見ごたえあって面白い。メレンデスとショーン、リムとクレア、レズニックとパク、アンドリュースとショーン、クレアとレズニック、メレンデスとパク等々、誰が誰と組んでも、3人以上のチームになっても不協和音にはならないし、それぞれ人間関係なんかがちゃんと成り立っていて、見ていて気持ちよい。レズニックとクレアなんて、反発しあってばっかりでいちばん合わないと思っていたのに、なかなかよい組み合わせになってきたのは驚き。
わたしがいちばん好きなのは、メレンデスとその下についたパク&レズニックかな。新しく着任したパク先生を自己中心で高慢な態度、と評したメレンデスに、えー、それをあなたが言う~!? って顔つきでそろってメレンデスを見るパクとレズニックはもちろん、ラスト、患者の腫瘍の検査結果が良性か悪性か、それはもうどうでもいいこと、と言って結果の書かれた封筒をゴミ箱に捨てて部屋を出ていくメレンデス。でもパクとレズニックは気になってしかたないから、ふたり揃ってダッシュでその封筒を取りに行くシーン、爆笑しちゃいました! このふたり、いいなぁ。
レズニックも最初はこりゃまた強烈なキャラが登場したな、と思ってたけど、クレアや他の医師と正反対の意見を展開するレズニックに、確かにそういう視点や考えもあるよなぁ、と気づかなかった別の見方を彼女が広げてくれてくれました。

そしてショーン・マーフィー。1話目でアンドリュースによる各医師との面談シーンがあるのだけど、「ショーン、きみはもう少し患者とのコミュニケーションをがんばったほうがいい」と言われてはい、と返事をしたその顔は全然アンドリュースのほうを見ていない……(苦笑)。彼の特性上、もうしかたないんだけれどね。
でもシーズン後半、ハン医師がずばりそれを指摘して。今は周りの人が助けてくれるけど、この先、レジデントを卒業したショーンが医師として上の立場になったとき、はたして部下を適切に指導できるのか、と。ショーン・マーフィーは、周りの助けがないと医師としてのつとめを果たせない外科医なのか、それとも適切なサポートが得られれば、その天才的な頭脳と腕で患者を救えるものすごく優秀な外科医なのか。それは本人だけではどうにもならない部分もあるし、自閉症でなくても一般のひとでも周りの支えがあっての仕事だとも思うし。
外科医としての腕だけでなく、患者はもちろん、同僚、上司、部下に対するコミュニケーションスキルも求められるショーンは、この先も向き合っていかなければならない様々な困難がたくさんあるわけで。それをどう乗り越えていくのか、引き続きシーズン3、そして更新が決まったシーズン4で丁寧に描かれることを楽しみにしています。がんばれショーンって、応援したい。

さてこのシーズンはショーンの恋も描かれましたが、まさか病理科のカーリーを好きになっていたとは、いつのまに!? とびっくりでした。スーツを着て彼女の家を訪れたショーンが贈ったのは、花束とチョコレート。やっぱり向こうでは贈りものといえば、これらが定番なんですね。

それにしても、まさかリムとメレンデスがお付き合いを始めるなんて、ふたりはよきライバル同士だったので意外でしたが、でもわたしリム先生もメレンデス先生もどちらも大好きなので、ぜひとも長続きしてほしいな。意外にもメレンデスのほうがロマンチストで、リムは現実主義者。でも、通勤途中の車内で熱いキスを何度も交わした後、たまたま徒歩で病院にやってくるショーンを目撃したふたりが慌てふためくのがおかしくて。「見られたと思う?」「分からない」「彼、絶対見てたわ」「そんなことないだろう」っていう会話がとってもファニーでした。
ところでアメリカでは医師同士の恋愛って厳格なルールがあるんですか? なんか論理委員会みたいなところから派遣されてきた人に呼び出されたふたりが、すごい細かい、しかもめちゃめちゃ性的でプライベートなことをいくつも訊かれていて。結果ふたりは問題なしだったけど、もし問題があったら即刻付き合いうのは中止なの? これ、すごく謎でした。

このシーズンにはドラマのエグゼクティブプロデューサーを務めるダニエル・デイ・キムがハン医師役としてまさかの登場で、これには本当にびっくりしました! 彼をドラマで見るのは「LOST」以来、とっても久しぶりで嬉しい。

Thank you, Dlife!

あと90分ほどで、BSチャンネルのDlifeが放送終了します。チャンネルひとつが丸ごとなくなるのを目のあたりにするのって、たぶん初めての経験だ。

最初に見たのは、「エージェント・オブ・シールド シーズン1」でした。実はそれまでは、BSだから視聴するのも有料だと思い込んでいたのです……。もっと早く出会いたかった。

たくさんの良質な海外ドラマをありがとう。字幕と吹替、どちらも放映してくれたのも、心から感謝です。本当にお世話になりました!

チャーリング・クロス街84番地

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84 Charing Cross Road (1987)


ニューヨークに住む作家ヘレーヌ・ハンフと、ロンドンの古書店Marks & Co. の店員フランクのあいだで交わされた、約20年に渡る往復書簡のお話。実話です。原作は「チャリング・クロス街84番地―書物を愛する人のための本」(84, Charing Cross Road)。
言葉で言い表せないほど素敵なお話でした。ニューヨークでは手に入らない絶版本を、ぜひそちらの古書店で探して送ってほしい、予算は一冊5ドル以下で、という依頼がきっかけで、本の注文だけでなく、日々の近況も知らせるようになるその手紙は、ヘレーヌの文才もあいまって、皆が彼女からの手紙を楽しみにするようになっていく。
愛や恋とは違う、でも相手を大切に想う心が手紙の文章からあふれ出ていて、だからこそ彼らの手紙のやり取りは、途切れることなく20年も続いたわけで。古書店で働くみんな(全員で5名の小さなお店なのですが)が、ヘレーヌから届く手紙を楽しみにして、さらにフランクの妻までもが私的なことをしたためた手紙を、自分たち家族の写真とともに送るだなんて、本当にびっくりでしたが、それを受け取ったヘレーヌが、フランクと彼の家族の写真を大切に壁にピンで留めるそのしぐさがまた素敵で。
女王の戴冠式を見に、ヘレーヌがイギリスにやってくると聞いてみんな本当に楽しみにしてたんだけど。フランクなんて、今まで秘書に口述筆記させていた手紙を、みずからタイプライターを使って「お越しになるのを一同楽しみにしております」って打ちもして。だけど直前に見つかった虫歯の治療費で渡航費が消え、ヘレーヌのイギリス行きは中止に。古書店の従業員はみな落胆を隠せず、それはフランクも同じなのだけど、勤めて平静を装って、いつもの業務に戻る姿が切なかった。

ちょっと面白かったのは、この映画、ときどきヘレーヌがカメラに向かって話しかけるんですよ。1987年の映画でこういう技法って、珍しいのでは? そしてその技法がいちばん活かされたのが、今までずっと、手紙の文面は声だけで読まれていたのに、終盤、ヘレーヌとフランクが直接相手に語りかけるようにカメラに向かって、まるで見ている私たちもまた、彼らにとって親しい誰かであるように、手紙を読むのが、本当に幸せで穏やかで、心から満ち足りている表情で。このシーンのアンソニー・ホプキンズとアン・バンクロフトがとてもとても素晴らしくて、心動かされました。だけどそのあとにヘレーヌに届いたのは、フランクが突然亡くなったことを知らせる秘書からの手紙。
そうして20年以上の歳月を経て、ようやくヘレーヌはロンドンに渡り、廃業した古書店に足を踏み入れる。店の中は本一冊たりとも、なにも残っていないけれど、でもそこには確かにフランクがいた名残りを感じられる、という終わり方でした。だめだ、書いてるだけで泣けてくる。
フランクの妻ノーラ(ジュディ・デンチ)は、夫亡きあと、自分の夫があなたと手紙のやり取りをするのが少し妬ましかった、わたしはあなたのようなユーモアは持ち合わせていないし、才能もないから、と書くのもまた、とても正直な人柄であることが伝わりました。そんな妻を、フランクは心から愛していたし、子どもたちをとても可愛がっていた。だからこそ、彼の突然の死がほんとうに堪えました。

インターネットのないころの、本屋(この場合は古書店ですが)の役割が垣間見えてとても興味深かったです。お客のリクエストに応えて本を探す、というのが面白いし、途中、フランクが家を長いあいだ留守にして、地方をあちこち旅して貴重な本を探すというのも興味深かった。たぶん教会とか、どこかの名家から大量に出てきた古本のなかから、状態のよいものや珍しいものを見つけて買い取ったり引き取ったりして、それを店で売って利益にしてる、で合ってるかしら。
そしてヘレーヌとフランクのあいだでも、ヘレーヌが本を版や出版社まではっきり指定する場合もあれば、フランクが、これはあなたが気に入るかと思って、と見繕った本をヘレーヌに送ったりと、いわば本のコンシェルジュみたいな役割を果たしているのも面白かった。顧客の好みと支払える価格帯を把握して本を選ぶって、なかなかむつかしいし、でもそれをやってのけるフランクはさすがのプロでした。

ところで1950年のイギリスって、戦争が終わって5年後でもあんなに食糧事情が悪くてちょっとびっくりなのですが。そして、自分でも「貧乏作家」と言っていたヘレーヌが食糧の缶をいくつも買って木箱に詰めてロンドンに送るって、かなりの出費ではないのだろうか、とも思うのですが。でも、配給制で食糧が貧しいときに、貴重な食材を受けとった古書店の店員たちが心からヘレーヌに感謝し、手紙でお礼を伝える姿もまた、心温まるシーンですし、会ったこともないひとたちに、なにか自分が役に立てることをしたいと思うヘレーヌもまた、素敵なひとですよね。

人への思いやりが隅々まであふれた、とてもとても暖かい映画なのはもちろん、アンソニー・ホプキンズの紳士然として抑えた演技が心に響きました。彼は品格のある人物を演じるの、とてもうまいです。見ていて「日の名残り」(1993)を思い出しました。

見たあと、誰かに手紙を書きたくなります。ふだんは言葉では伝えられないことも、手紙でなら言える、というの、あるよね。
間違いなく今年のベストに入る、忘れがたい作品でした。

11月に延期

誰が悪いわけでもないし、もうこればっかりはしかたがないんだけれど! 007の新作も公開が延期になりました!! でも延期だから。中止じゃないから。待っていたら必ず来るから。それまで我慢。8ヵ月の我慢……うっ……8ヵ月は長いね……。
でもね、過去3作とも、すべて晩秋~冬の時期に公開されていたので、そっかー、今度は春かぁ、と思っていたから、11月公開は、実は気分的には盛り上がるのかもしれない。なにがどう盛り上がるのか、自分でもよく分からないですが。


ついでに言うと今日、スウォッチの限定Qモデルが発売されたけど、日本のショップ、発売当日すでに売り切れって、いくらなんでも限定すぎるだろ……。
007の公式サイトでは販売してるけど、
Q Swatch Watch - Limited Edition
配送料にプラス£25が必要。
うーん、悩む。でもわたし、今してるタグホイヤーがとても気に入ってるから、新たに腕時計を買う必要はないし、でも腕は2本あるし、とか思いながら再入荷のお知らせメールに登録しておきました。往生際が悪いね。