パディントン

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Paddington (2014)


暗黒の地ペルーから船に忍び込みイギリスに密入国してロンドンにやってきた仔熊。のちに「パディントン」と名付けられる、駅でぽつんとただずむ熊に救いの手を差し伸べたメアリー(サリー・ホーキンズ)の顔が本当に素敵で優しくて、もうわたしはこの時点で泣いてしまいました。
とてもとても温かいお話でした。この映画は「ロンドンは移民や難民、どんな人も受け入れます」っていうメッセージを送っているようにも思えるの。この映画の場合は「人」じゃなくて「熊」だけど、そういう違いも気にせず生きていける街だよって。
保険会社に勤めるブラウンさんはリスク管理にうるさいんだけど、その彼が終盤は体を張って危険を冒してパディントンを助けようと奮闘するのは胸が熱くなるし、ブラウン一家に仲間入りしたパディントンはついに"Home"を見つけ、新しい家族ができたラストはこれまた泣けました。熊が主人公の映画だよって言ってしまえばそれまでなんだけど、もし誰でも分け隔てなく受け入れる心を持てたら、今よりもっと国や人種、宗教の違いを超えて幸せに生きることができるんじゃないかな、という希望のようなものを感じました。

子供向けになんか全然つくっていない、楽しくユーモアがあってでも本気で作ってますっていう気持ちがひしひしと伝わる作品でした。そしてこれ、とにかく笑えるシーンがとっても多くて、そのうえ音楽と効果音の使い方がものすごくうまくて、センスある!と感嘆しました。
ブラウンさん役ヒュー・ボネヴィルは女装姿まで見せてくれたし(ダウントンの伯爵がですよ~)、お隣のカリーさんのキャラクターは最高だし(演じるのは12代目ドクターことピーター・カパルディ!)、ニコール・キッドマンがノリノリで演じるミリセントは、ラストで実は探検家モンゴメリー・クライドの娘だったことが明らかになってこれはけっこうびっくりしましたが、パディントンを捕まえてはく製にすることに失敗、最後は自然史博物館の屋根から落っこちちゃうんだけど、死なずに動物園での無償奉仕で罪を償わされるというのはほっとしました。とても平和な映画ですね。
画面の色使いもとても素敵で、ブラウンさんちは赤、カリーさんちはペパーミントグリーンがテーマになっているのも素敵でした。
そしてそして、パディントンの声をあてるのは我らがベン・ウィショー!もうね、最初から最後までずっと彼の声に聞き入りました。「はちみつを溶いた紅茶のよう」と形容されるのがぴったりで。少し早口なんだけどとてもそしてクリアな発音で、非常に聞き取りやすくて、もうこれ音声だけ抜き出してずっと聞いていたいなー!
ナレーションのお仕事は昔ちょっとよい思い出がなくて敬遠していたけれど、今回は姪っ子が喜んでくれたらと思って引き受けた、と以前インタビューでお話していましたが、彼の声、本当にパディントンにぴったりで、クマのつぶらな瞳が不思議とウィショーくんに似てるとさえ思えました。お笑い番組みたいに、画面のすみにワイプが出てきてウィショーくんが声をあてている様子を映してほしいって真剣に思った。
実は最初はコリン・ファースが声をあてることになっていたんですが、自分の声はパディントンのイメージと合っていないから、という理由でみずから降板したといエピソードもありました。私はコリン・ファース版も聞いてみたいなぁ。

来月公開の続編も楽しみです! 近くの映画館では吹替版しか上映されないだろうけどね~。

「パディントン」は本日~12/24までGyaoにて字幕・吹替とも無料配信中です。

エンド・オブ・トンネル


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Al final del túnel (2016)


ストーリー展開にもうひとひねり欲しかったな、という感想。
事故で車いす生活になったホアキンが自分の家の隣で銀行強盗をたくらむ一味が出入りしているのを知って、家の下を通る彼らが掘ったトンネルを利用して彼らが盗もうとしている金を横取りしようとするのが話の発端なんだけど。まず隣人たちの事情が気になって盗聴盗撮をするのは分かる。興味がひかれるから。で、次に自宅の2階とバルコニー部分を賃貸に出したら訳アリっぽい母娘が突然引っ越してきたのが、実は母のベルタも強盗グループの仲間ってことが分かって。でも彼女の娘に一味のリーダーでありベルタの交際相手ガレルトが娘に性的虐待を行っていることが分かって、制裁を加えるという目的が増えたんですが。
ホアキンが金に困ってる感があまり感じられなくて、切羽詰まって強盗の計画を知ってこれは千載一遇のチャンス!て思う感じがあまり感じられなかったのね。あとベルタをかなり長いあいだベッドに拘束して監禁するのにはちょっと無理があるんじゃないかと。
なによりホアキンは下半身が不自由で歩けない、という設定をもっと活かしてほしかったかな。本編ではトンネルの中やリフトのない部分を腕の力だけで進んだり昇り降りをしていて、それももちろんおぉ、と面白かったけれど、たとえば立ち上がれないから高いところにある何かに手が届かなくて彼の身に危機が迫る、とか、歩けないから早く移動できなくてヤバいことになる、とか、車いすに乗ってるからこそ健常者には気づかない目線や動きで反撃するとかね、肢体不自由を逆手に取った胸のすく場面を見たかったの。

でもなかなか面白い作品だったし、ラストでホアキン、ベルタとベティが一緒にあの家を去る時の彼らの服が似た色をしてて、なによりホアキンは以前は着ることのなかったであろう明るい色あいの服を着ていて、彼らの人生にきっとこの先幸せがあるだろうと思わせてくれるラストでした。
ホアキン役レオナルド・スバラーリャはマーティン・フリーマンに似てると思いました。ジョージ・クルーニーに似てると思うひともいるかもしれない。


ちなみにこの映画、ジャケットの写真に一発で惹かれて視聴を決めた、いわゆるジャケ買いならぬジャケ借りだったのですが、車いすの前輪を持ち上げるのってなかなか難しくて。しかもキャスター上げたまま静止してるのがすごい。私も以前このキャスター上げに挑戦したのですが、数秒後にものの見事に後ろにすっ転びました。あまりにも見事な転びっぷりで自分でもコントかと思った。

アメリカン・サイコ

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American Psycho (2000)


2000年の映画なのになんでこんな古臭いNYなんだろう?と思ったら、1980年代が舞台のお話だった。そしてクリスチャン・ベイルがヤバい。そうとうヤバい。私はこの俳優の特徴がいまいちつかめなくて、いちばん印象に残っているのはガン=カタが繰り出される「リベリオン」かなっていう……。ビジュアルは「プレステージ」がいちばん好きですが。なのでこの映画のベイルはものすごくインパクトあったしとにかくヤバい。さっきからこれしか言ってない頭の悪い感想。

ベイル演じる主人公のパトリックは間違いなく精神異常者だと思うのですが。それは何億という大きな額を動かすウォール街のエリートだから日々のプレッシャーからそうなったのかなと推測したのですがそうでもないみたいで。もともとそういう欲望があって、大金を手にできるようになったことで自分の望みを叶えられるようになっちゃったのかなぁ。夜な夜な殺人を犯して朝になるとフツーに高級スーツを着て出勤して仕事するってその時点でもう普通じゃないよね?
しかし巨額の金を手にしたエリート同士が張り合う姿はまったくもって意味不明だしはたから見ればそうとうに滑稽。予約がなかなか取れない超人気の高級レストランで食事をすることが彼らにとってはステイタスだし(だからオープニングで美しい高級料理の数々が映るのですが、どことなく嘘っぽい作りものにも見えるのはそのせいかと)、オーダーした名刺がどの紙で作られてでどういう書体で印字されてるかなんてほんとどーでもいいだろ!と思うのですが(笑)。
こんな感想なのでつまりお話はあんまり面白くありませんでしたがキャストが豪華でした。パトリックの婚約者にリース・ウィザースプーン。パトリックのオフィスの秘書にクロエ・セヴィニー。同僚にマット・ロス。この人は俳優ですが同時に「はじまりへの旅」の監督でもあります。パトリックを調べる私立探偵にウィレム・デフォー。
そしてそして、出番はほんの10分ほどでしたがパトリックの自宅に招かれてそのまま斧で斬殺されたポール・アレン役にジャレッド・レト!きゃー、相変わらず美しい瞳にうっとり。ええもん見させてもらいました。


パトリックの住む高級マンションの部屋に飾られていた一連の作品。これは私は見覚えがありまして、ロバート・ロンゴの"Men in the Cities"の中の作品でした。思わぬところで再会できてびっくり。というのは、アーティストでもあるロンゴを知ったのは監督作の「JM」(1995)でしたが、映画としての評価は低いですがすごく私好みだったし、その後ロンゴの展覧会があると知ってわざわざ当時住んでた名古屋から大阪まで足を運んで見に行ったこともあったので。当時のことを思い出して懐かしくなりました。

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(画像はこちらからお借りしました)



インターステラー

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Interstellar (2014)


いちばんびっくりしたのはマット・デイモンが出てたことでした。ファンのくせに完全にノーマークだった……なんでスルーしてたんだろう。「オデッセイ」の時に、ジェシカ・チャステインとマットがまた宇宙モノで共演してるっていうのは聞いていたけれど、この作品のことだったんだ。

お話はとても難しかったので私たぶん半分も理解できてない。しかしゴリゴリに理系な内容で押し進めてきたのに終盤は愛が解決の糸口ってオチには、えぇ!?ってなりました。そ、それでいいのかな?とも思いつつ、監督が「これでいい!」ときっぱりと言い切った感がありました。力技。
まぁフィクション(映画)って多かれ少なかれそういう面がありますが、クリストファー・ノーランは夢や想像、つまり現実では絶対ありえないことを、見てる側の疑問を吹っ飛ばすくらいの壮大なスケールの作品でもって断言してくれるというか。もちろん興行的に成功しているからこそ次々と作品を生み出すことができるのではあるけれど、自分の描きたい作品を巨額の予算とお気に入りのキャストで作れるって最高に高次元な夢の実現ですよねぇ。ある意味うらやましいわ。

マシュー・マコノヒー演じるクーパーが、娘のマーフとの約束を果たしたから再び宇宙へと飛び立つラストは考えさせられました。クーパーの二度目の宇宙飛行は間違いなく片道切符だろうし、彼をもう一度旅立たせようと思った動機はやはり愛で、遠い惑星にひとり残され、信号を送りながら次に来る人間の到着を待っているアメリア(アン・ハサウェイ)を救うためなんですよね。
このお話は、どんなに複雑な方程式を解けても精密なプログラムが組まれても、人間の感情が最終的な決定権を持っているということを言いたかったのかな、と思いました。

音楽が美しかったです。こちらもノーラン作品の常連、ハンス・ジマー。なんだか久しぶりに「インセプション」が見たくなりました。


アイ・アム・デビッド

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I Am David (2003)


これはジム・カヴィーゼルが全部持って行った映画だなー!
しかも監督はこの後「スパイ」(2015)や「ゴースト・バスターズ」(2016)を撮ったポール・フェイグな上に、音楽は私の敬愛するスチュワート・コープランドが担当。そのあたりも非常に美味しい映画でした。

お話はいたってシンプルだし90分と短いし登場人物が非常に少ないので(つまりものすごくあっさりしている…)、よけいにヨハン役ジムの演技が引き立ってました。
デビッド(ベン・ティバー)が収容所を脱走して逃げる時に用意されていた鞄の中の小物類。コンパスや大きめのパンは分かるけど、なぜそこに固形の石鹸?しかもむき出しで入れてあって。その後もその真っ白な石鹸は意味ありげにちょくちょく出てくるのだけど、中盤でその理由が明かされます。
生きる希望を見いだせない収容所内での生活で、それでも生き続けることを説いたヨハンは、出来心で石鹸を盗んだデビッドを庇って見せしめに撃たれて殺されてしまうという最期でしたが、その時の目が全てを物語ってました。このシーンは本当に素晴らしく、私は心を持っていかれた。やはりジム・カヴィーゼルは目が特徴あるし、かつものすごい目力だよね。

ただ、それ以外はさっきも書いたけどわりとあっさりしていて、少年が数か国の国境を越えてデンマークを目指す過程はちょっと現実味がない描写なので残念。
収容所も、そこにいる子供はデビッドだけなのか?そもそもここはどういう類の収容所なのか?ヨハンは学校の先生とか学者みたいな雰囲気ではありましたが特に具体的な描写もなく、なんだか全体的に説明不足というか、いまいち掴みどころがないお話でした。

終盤で、冒頭のナレーションの声の人物の正体、かつデビッドの脱走の手助けをしたのは実は収容所の所長だったことが明かされます。彼は石鹸を盗んだのはデビッドなのを分かっていたし、立場上、罪を被ったヨハンを無実と知りながら、見せしめとして彼を撃たざるをえなかった。
その所長役フリスト・ショホフってつい最近どこかで見たぞ!?と思ったら、「パッション」でもジムと共演してるではありませんか。ふたりの関係もよく似てるし、私はこの2本をたまたま続けて見たので軽い驚きでした。


「大脱出」に続いて、出たなまつ毛お化け!


すごいよね、まつ毛の影が目の下に落ちてくっきり見えるって、まつ毛自体どんだけ長いのよ。