ゲティ家の身代金

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All the Money in the World (2018)


「孫の身代金くらい払ってやれよ」と言いたい映画だった。普通大金持ちなら「金に物言わせる」行動に出るんじゃないかと思うのですが、ジャン・ポール・ゲティというじーさんはいかに「金に物言わせない」ようにするかに人生を費やしてる……のか……?
彼がそこまで無駄なお金を使いたくないのってなにか理由があるのか、というのは知りたかった。そういう描写はなかったよね……?
彼が巨額の富を手にしてるから当然息子の嫁、ゲイルも金持ちだって世間からは思われているのに実際は義理の父が金を1セントも出してくれないから息子の誘拐犯に身代金を払えないっていうもうどんだけ辛い立場か。見てて途中から暗澹たる気持ちになってきちゃった。
誘拐自体が泥沼化していくのもやりきれなくて、見終わったあと気分がよいとはとても言えない。でもでも、そんな中誘拐したポールに段々心を通わせはじめるチンクエントには少し希望を見いだせたし、ゲティの態度にとうとう匙を投げたフレッチャー・チェイスが彼の元を出て行くときの台詞には、やっときっぱり言ってくれた!とこちらもすっきりしました。
チンクエント役にロマン・デュリスには、わー!!! と嬉しくなったし、彼には極悪非道な男は絶対無理だから心優しい誘拐犯なのもすっごく良かった。
そして「ディパーテッド」のラストみたいに、前述のシーンでキメるところはきちんとキメてくるチェイス役マーク・ウォルバーグもかっこよかったぜ~。

あんまり人におすすめできる映画ではないけれど、お話はとても見応えはありました。

グレイテスト・ショーマン

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The Greatest Showman (2017)


ストーリーはごくごく普通だと思いましたが、ミュージカルだから当然かもしれないけれどどの曲もみな本当に本当に素晴らしかったです! そしてP・T・パーナム役ヒュー・ジャックマン。実質彼ひとりで話をぐいぐい引っ張っていきました。それほどに彼の歌と踊りには力がありました。最後にパーナムの"The show must go on."の言葉と共にフィリップ役ザック・エフロンが帽子とステッキを受け取ったけど、やっぱりちょっと役不足感があって。ヒューは黒のシルクハットも派手な赤いジャケットも嫌味なくらい似合ってて(きっと手足がすごく長いからでしょうね)、彼は本当に華やかな、生まれ持ってのエンターテイナー性に溢れた人なんだなぁと感じました。
フリークスを集めたサーカス団のメンバーの葛藤は"This is me"の歌詞にうまく反映されていたのでこの辺りは非常に満足でしたが、フィリップがパーナムに協力するくだりはちょっと謎で。劇作家としてすでに名を馳せているフィリップが物珍しさで耳目を集めているパーナムに協力しようと思った理由は金だけじゃないとは思うんだけど、まさかアンに一目ぼれしたから……!?ちょっとこの辺は弱いかなぁと思いました。なのであまりフィリップには感情移入できなかったんだよねー。
最近ドラマばかり見ているせいか、2時間で描かれる映画は登場人物の描写がよほどしっかりしていないと満足できなくなっているような。この辺は頭を切り替えて観たほうがよいのかもしれない。
あと建物が燃えて一からやり直して屋外にテント張ってそこを舞台にするって、めっちゃ「SING」だなって。
そして最後、娘のバレエの発表会に駆けつけたお父さん、象に乗ってやってきたんですけど……これすごいウケた……(笑)。

ちょっとこれ、サントラ買いたくなりますね。好きになったものには進んでお金を落としたい。

ほんとヒューの歌声が素敵な映画でした。もういっそのこと彼はこういうミュージカル映画もよいのだけど、NTLiveみたいにヒューの立った舞台をそのまま映画館の大音響で上映してくれればいいのに! わたしは大画面で「オクラホマ!」が見たいの。あのキンキラキンの衣装でマラカス振るヒューが見たいのよ!

キングスマン:ゴールデン・サークル

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Kingsman: The Golden Circle (2017)

マシュー・ヴォーンはこぢんまりした映画作りのほうが合うのでは? と思うのは私が「レイヤー・ケーキ」を好きだからだろうか。
前作はエグジーの成長物語だったけど、今回はなにをしたかったのだろうか。アメリカのステイツマンと協力してふたつの組織が悪を倒す、な話だと思ってたし確かにそういう話でもあったしステイツマンの中に裏切り者がいたのもお約束な展開だったけど。
ハリー・ハートの復活は嬉しかったけど引き換えにキングスマンメンバー(マーリン含む)全員を死亡させましたって感じがなー! ファンから愛されてるキャラを惜しげなく殺しちゃうのがストーリー展開上必要な時もあるだろうけれど、このシリーズに限ってはそれはなしだろうよ……。わたし、ロキシーが大好きだったのでなんかとっても悲しかったし残念だった。

現場に出ることになったマーリンがスーツ姿で登場したときは、あまりの足の長さに目が点になりました。つよしはモデルも務まるね。すげー。

エグジーはおつきあいしてる女性が一国の王女様なんだけど口の悪さとなまりは変わってなくて笑った。でもじゃあその彼女が結婚したいと思うほどエグジーのどんなところが好きになったんだろう? という疑問もあってですね。ふたりの背景の設定が薄いなぁと思いました。

そしてチャニング・テイタムはもうちょっと活躍しても良かったのでは……?

ハル・ベリー演じるジンジャーエールはステイツマンにおけるバックアップ担当なのでマーリンと同型のキャラクターなんだけど、もともとマーリンが007のQに寄せて作られたであろうと思われる人物なので、ここはぜひクロスオーバーでマーリン、ジンジャー、Qの3人で並んでほしいなと思いました。バックアップ組のスピンオフがあってもいいのではないだろうか。

感想は以上です。

クリミナル 2人の記憶を持つ男

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Criminal (2016)


ケヴィン・コスナー主演。ゲイリー・オールドマンにトミー・リー・ジョーンズも出ててなかなか渋いキャスティングなんですが、いかんせん主人公ジェリコ(コスナー)の設定や状況をもう少し詰めたらもっと面白くなったのに~~!と思わずにいられないお話でした。
そもそもジェリコは少年時に頭を強く打ったせいでサイコパスみたいな感じになっちゃったらしく、感情を持たずそれゆえ極悪な殺人を犯して長いこと刑務所に厳重管理で収監されている人物、という設定ですが、その脳の状態が殺されたエージェントの記憶を移すのに適しているという理由だけで話を押し切っているので、その他の条件をもっと詳細にしておけばもっとハラハラドキドキの展開になったのに、と思わずにいられませんでした。
術後、ジェリコはうまいこと病院から逃げ出して、これ幸いと刑務所から脱出できたんだけど、植え付けられたエージェントの記憶がだんだんとジェリコの感情や行動を支配するようになって、いい人になっていくのですが。移植手術をした博士が、その記憶はもって48時間っていうのを移植後けっこう経ってから言うんだよね。それ、最初に出しておけば時間制限がある話なんだなって分かるし、自由を得たジェリコは移された記憶のせいで亡きエージェントの妻と子どもにだんだん感情移入していくんだけど、手術を受ける条件として、事件が解決したらジェリコは自由の身になれる、とか本人にうまみのある免責事項や取引があったら、果たして彼は自由を得るのか、それとも移植されたエージェントの記憶に支配されて妻子ととも、愛のある新しい人生を送るのか、さぁどっち!? な葛藤が深まるかなぁと思ったのです。
なんかとりあえず48時間以内に記憶をジェリコに定着させたら彼は妻子を選ぶ人生を選びました、的な、なんとなく輪郭がぼんやりしたラストで、ちょっとんんー? てなったので。
あとね、なぜジェリコが凶暴なのは分かるけど、ずっと刑務所にいたのに、いざ銃を持たせたら一発でちゃんと相手を仕留められるのは、いやいやそれはないだろう! と。この辺リアリティを求めちゃだめですかね~?

私はケヴィン・コスナーは多分「アンタッチャブル」(1987)が初めて見てかつそれでファンになったんだと思いますが……あ、違うな、初見は「フィールド・オブ・ドリームス」(1989)かな。彼は男性としてはちょっと声が高いので、若い時は大声で話したり演説するシーンではちょっと迫力不足かなって感じていたんですが、歳を重ねたせいか声そのものが低く渋くなって、今回見ていて、あ、いいなこの声って思いました。今52歳。まだまだいける。


余談ですがこの後に「バットマンVSスーパーマン」見たらそれにもこの映画と同じケヴィン・コスナーとガル・ガドットが出ててちょっとびっくり。



コーチ・ラドスール 無敵と呼ばれた男 再見

When the Game Stands Tall (2014)

二度目に見て気付いたことを調べてみたら驚きの事実が色々出てきてびっくりだったので覚書。

初見時は、ずいぶん宗教色の強い話だなぁとは思ったけれど(そして後述するように実際その通りでもあったのですが)、私は主人公のラドスールコーチの言葉はどれもけっこう好きなんですよ。こう、胸にすとんと落ちるというか、大事なものは連勝じゃなくて他のことだよってのを色んな言葉で伝えてくれたのが大きくて。こんなコーチの元でアメフトできた生徒はすごく幸せだったと思うの。
で、私は初見時このコーチはチームに必要な信念を聖書の内容やキリスト教の教えを使って説いている人物、つまりあくまで個人的に熱心なキリスト教信者だと思ってたんですよ。だけど、高校の中庭に十字架が建てられてるシーンがチラッと映って、あれ?と思って。もしかしてここはキリスト系の学校なのか?
で、調べたらやっぱりデ・ラ・サール高校は、ローマンカトリック系の男子私立高校で、生徒の99%が大学に進学するプレップスクール(大学進学に重きを置く進学校)とのこと。なのでたぶん生徒はみなさんそうとう頭いいだろうし、Wikiには School fees(年間の学費)…$16,800 ってあるので裕福な家庭でないと通えないよね。スパルタンズみたいな強豪チームであればあるほど遠征試合とかでさらなる金額が必要だろうし。まぁこれは日本の高校の部活でも同じだけど。
ただ、父親はもうおらず、母親も病気で亡くして残された弟を養なわなければいけないキャムは、奨学金が約束されているオレゴン大学への進学を決心したけれど彼の家は明らかに低所得ではあるので、おそらくキャムはデ・ラ・サール高校へもフットボールの腕を見込まれて奨学金を得て進学したのかな、とは思うのですが。住んでいる家の場所も高校からとても遠そうだったし。実際他校のコーチが、デ・ラ・サール高校が強いのは奨学金で優秀な選手を集めているからだ、そうでなければなんでうちの学区に住んでるのに1時間もかけてデ・ラ・サールに通うんだ、って怒ってるシーンがあったし。この辺もやはり日本の高校野球と非常によく似てるかな。ただ、咎められたラドスールは、運動部の生徒に奨学金を出すのは禁じている、とも言ってるんだよね。
テレンス・ケリー(TK)の父親は名前の刺繡が入った作業着を着てるから、おそらく清掃とか力仕事の類の仕事についていることは間違いないし、クリス・ライアンの父親は車のセールスマン。どのくらいの収入があると安心してアメリカの私立高校に通えるんだろ?

ちょっと話が脱線してしまいました。
デ・ラ・サール高校のテーマカラーは白、シルバー、緑。だからアメフトチーム、スパルタンズのユニフォームやコーチ、スタッフが着る服は緑や白なんですね。
"Les Hommes De Foi"。これは映画の中で撃たれて亡くなったTKを忍ぶ横断幕に書かれていた一文なんだけど、なんでフランス語と英語の両方で表記され、なぜ「信念の男」と書かれてるのかまったく意味が分からなかったんだけど、これはデ・ラ・サール高校の校訓なんですねー。そしてフランス語で書かれた理由は、高校の名がフランス人カトリックの聖人、Jean-Baptiste de La Salle(ジャン=バティスト・ド・ラ・サール)に由来しているからなのです。ド・ラ・サールは高貴な身分の人々だけでなく平民にも教育の必要性を説き、亡くなった後は教育者の保護聖人になったとのこと。あーあーあーだからかー、なるほどねー、と頷くばかりです。

そのド・ラ・サールから派生したラ・サール会が設立した学校が日本にも2校あって、もうここまで言えば分かるかなとは思いますが、それがラ・サール高校です。高校生クイズの出場常連校と言えばいいかしら?初めて聞いたときは変わった名前の学校だなーって思ってましたが由来が分かってすっごい納得。1本のアメリカ映画が日本の高校にまでつながるとは思わなかったので驚きでした。
こんだけ色々情報を得てから見るとこれはフットボールをテーマにしたスポーツ映画ではないことがよーく分かります。普通ならコーチが心臓発作で倒れるエピは中盤に持ってきてもいいくらいなのに、前半であっさり出してるのもそれが理由かと。つまりはっきり言えばずばり宗教がテーマの映画です。
まぁそれを抜きにしても熱いメッセージの映画ではありますが、ここまで上記のような条件が揃ってたら、そりゃこの仕事をジム・カヴィーゼルが受けないわけないよねっていう(カヴィーゼルは超がつくほどばりばりに敬虔なカトリック教徒です)。

話を戻すと、ということはこの学校の先生やスタッフはみんなカトリックなのかな。ラドスールもコーチ業だけじゃなくてデ・ラ・サール高校で授業も受け持つ教師……だよね?校内の廊下を歩いてたし。何を教えてるんだろ?国語とか神学とか?そもそもLadoceurという苗字からいってフランス系かなとは思うのですが、その辺は調べても出てこなかった。まぁ個人情報なので出てこなくてもいいかなとも思いますが。
ラドスールは2013年にコーチ業を引退しているので、それを待って2014年にこの映画が公開されたのかな、とも。さすがに現役の高校フットボールコーチが映画化って、学校とその周辺にそれなりに影響があるものねぇ。

あとは映画の感想をちょこっと。
ラドスールはことあるごとに、信念や助け合い、愛、この先社会に出て生きていくために必要なこと、周りから信頼される人物になれ、と説くんだけど、周りはスパルタンズにとにかく連勝することしか求めてなくて。いったん負けて、また勝ち始めたけどまだ2勝しかしてないのに、もう前回の記録151勝を打ち破れって大騒ぎしている街のひとたち。応援はありがたいけど期待はプレッシャーでしかなく。
生徒は生徒で、ティーンエイジャーという「今」しか見えてない年頃。強豪チームだからマスコミも押しかけるし当然女の子からはモテるし、いろんな世界を知って若者の将来は何が大切か、必要かを知っている成人したコーチが伝えたいと思うことはなかなか伝わらないわけです。自身も心臓を患って健康に不安もあるし、終盤、はー、なんかちょっと疲れたなー、もう大学のコーチのオファー受けちゃおっかなー、なラドスールには思わず同情してしまいました。自分の歳はどんどん上がっていくのに、接する生徒は永遠に15~19歳の子ばかりだもの。そりゃ疲れも出ますよね。
だから最後はタッチダウンの新記録を余裕で打ち立てるチャンスがあるのに、試合の勝利をコーチに捧げる方を取ったクリス・ライアンの姿に、教え子たちはちゃんと分かっててくれたんだな、とラドスールは救われたと思いますよ。

あと、字幕では「コーチ」とか「ラドスールコーチ」って出るけど、原語では頻繁に"Coach Lad"って呼ばれてるんですよ。日本語とは逆で英語はまず役職名が先に来るんだけど、「コーチ・ラド」ていう呼ばれ方、なんかすごく可愛くない?そう思うのは私だけ?
それと吹替ではラドスールを滝さんが演じているのでこれも一度見て(聞いて)みたいなとは思ってます。


Wikipedia - De La Salle High School (Concord, California)

Wikipedia - Jean-Baptiste de La Salle

ウィキペディア - ジャン=バティスト・ド・ラ・サール