Savannah

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Savannah (2013)


エマさんに続いてカヴィーゼルも今月お誕生日だから彼の出演作をなんか見よう、って思いましたがもうすでにあらかた見尽くしてしまったので日本未公開のものに手を出しました。字幕なしだったのでスクリプトとにらめっこしての視聴。理解度は40%……かな。南部なまりの英語を話されるともう完全にお手上げ。
ジョージア州のサバンナ川でカモ猟をしていた実在の人物、ウォード・アレンのお話。正直これでもかというくらい地味な映画なんですが、空撮で撮ったサバンナ川の景色がめちゃくちゃきれいなんですよ。そしてびっくりするくらい音楽が美しくて、それはもう胸を抉られるくらいに。スコアを探して弾きたいなと思うほどピアノが美しい旋律を奏でております。この二点は高く評価したい。

ウォードと一緒にずっとカモ猟をしてきたクリスマス(12月25日に生まれたからクリスマスって命名されたというびっくりな名付け。演じるはキウェテル・イジョフォー)が晩年にウォードとの思い出を語るという形式でお話が進みますが。
んんー、これ、何に焦点を当てたかったのだろうか。ウォードの人生を描いたお話ではあるんだけれど、カモ猟、ルーシー(ジェイミー・アレクサンダー)との出会い、クリスマスとの絆、と色々あるけどどれも中途半端なせいか結局何も残らなくて。個人的にはアメリカ南部という人種差別が色濃い土地で元は奴隷だったアフリカ系のクリスマスとどういう経緯で彼がカモ猟の相棒になったのかは知りたかった。

1900年代初頭、アメリカが好景気に沸いて勢いのあった時代、国外に出てオックスフォードで学び頭がよいだけでなく弁も立つウォードは裁判でも弁護士を立てずに全部自分で弁明して相手をやり込め勝訴をもぎ取っちゃう(笑)くらいの人物なんだけど、カモ猟で生計を立てている、というか飛ぶ鴨を撃ち落とす腕が半端なくて、多分百発百中なんじゃないかな。ウォード自身ハンターという職業におおむね満足している。愛嬌のある性格でもあり、周りからも好かれて欠点など何もないように見えるんだけど、いかんせん酒癖だけはひどく悪く、お互い一目ぼれのような形で恋に落ちて結婚した妻ルーシーからはそれが原因で次第に愛想をつかされつつあるのですが。
自宅で妻から飲みすぎを咎められて威嚇するかのように発砲したことで、さすがに今回ばかりはいつもの判事も甘い顔はできず刑務所に10日間の拘留。そのあいだに彼が新聞に寄稿した文章はとても素晴らしく美しい内容でした。

しかし中盤で起こる物語の転換期が妻の死産とそれによって精神を病んだルーシーというたいへん暗い出来事で。夫婦一緒にその悲劇を乗り越えていくのかと思いきや、彼女の両親が娘のルーシーを引き取り、遠く離れた地へと旅立ってしまうのですよ。そういうのがあたり前の時代だったのか、それとも彼女の一家が裕福だからそういう手段を取ることができたからかは分かんなかったけれど。
少し前にはどこに行くにも猟にも一緒だった愛犬も亡くしているウォードはたったひとりの孤独な人生を送ることになり、その後立ち直ることはなかったんでしょう。年老いたクリスマスの部屋には一緒に猟をしていた頃の若いウォードの写真が飾ってあることからも、多分彼は最期は愛したサバンナ川で自殺したんだと思う。
終盤でウォードが川に浮かべた木彫りの鴨。あれは生まれてくるはずだった子供に贈るつもりでいたんだと思います。このシーンは本当に辛かった……。

ルーシー役のジェイミー・アレクサンダーが光りました。私、こういうちょいきつめの顔立ちの女性が大好きなんです。ミシェル・モナハンとかサンドラ・ブロックとか。この映画のジェイミーは眉毛が細いせいか、なぜかドラマ「ツイン・ピークス」のララ・フリン・ボイルを思い出しました。

カヴィーゼルは実在の人物を演じるのが好きですね。私としてはせっかくのその美貌を活かしてもっと華やかな役についてもいいと思うのですが、まぁ本人が好きで選んで演じてるのならいいかな……。でもたまには商業大作映画に出て欲しいし日本の映画館の大きなスクリーンで姿を見せてくれ~、と東洋の隅っこの国から愛を叫んでみる。

Savannah Gil Talmi


ジョイ

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Joy (2015)


ジェニファー・ローレンスはなぜこんな若くしてすでにどっしりとした存在感を身に着けているのだろう……。2013年にはオスカーを受賞して像を受け取りにステージに続く階段をあがろうとしてコケた姿さえ堂々としてて、でもまだ残る実年齢相応の可愛らしさもあって(ちなみにこの時、近くに座っていたヒュー・ジャックマンが彼女を助けようとサッと駆け寄っています)。


手を汚さず手元の柄を回せば絞れるモップ。吸水性は抜群。汚れたらヘッドから外して洗える。小さいころからモノ作りが好きだったジョイ(ローレンス)が発明した革新的なモップ。父親(ロバート・デ・ニーロ)の恋人(イザベラ・ロッセリーニ。すごい迫力でした!)から資金を出してもらい、工場で生産してQVC(24時間放映のショップチャンネル)で紹介したらバカ売れ。だけど成功してめだたしめでたし、で終わるお話ではなく。
ジョイはあまりにもしっかりしてるから、かえって皆が彼女を頼ってしまう。彼女もまた、頭がよくて冷静すぎるから、両親の離婚と同時に金のかかる大学進学をあきらめる。素敵な男性と出会って結婚してすぐに子供も立て続け2人授かり、でも夫は働かず、働いても収入は不安定、まだ幼い子どもの前で夫婦喧嘩ばかり。典型的な貧困ぎりぎりの家庭。そう、ジョイは今までずっと諦めてきた人生を送ってきた。だからこそ、開発したモップが売れるようにするためにする努力と払う犠牲はなみなみならぬもので、膨大な負債を抱えても、モップの生産と販売の権利を失っても、今回だけは絶対にあきらめなかった。
見てて分かるんです。頭を悩ませる日々のいろんなことや次々起こるトラブルにもううんざりで、しかし解決策を見いだせない社会的に立場が弱い女性だったのが、自分が理想のモップを完成させて売れるまでの険しい道を歩み始めたジョイの姿は、勇ましいファイターそのものでした。
中盤から出てくるQVCのニール(ブラッドリー・クーパー)が話すTVショッピングの仕組みがすごく面白くて思わず見入りました。そしてニールは商品の解説をする司会の女性たちふたりを撮っているカメラマンに向かって「手だ、手を映せ。来るぞ、もうすぐ来る。そこだ、手だ! 手をアップにしろ」っていうくだりがすごく引き込まれて。なるほど手かぁ、って。これ見たあとではTVショッピングの見方が変わりそうです。

デヴィッド・O・ラッセル監督のもと、ジェニファー・ローレンス、ブラッドリー・クーパー、ロバート・デ・ニーロが出演といえばもちろん「世界にひとつのプレイブック」が思い出されます。そして「世界~」の時と同じように、やはりこの映画でも家族みんながあれこれ好き勝手言いあう丁々発止のやり取りのシーンがあるんだけど、なぜこの監督はこういうシーンを撮るのがうまいんだろう。複数の人物がわいのわいの言い合ってるだけなのに、ちゃんとどんな話をしてて何を揉めてるのかがすごく分かりやすくて、ただの言い合いや喧嘩で終わるんじゃなくて見応えのあるものになっててぐいぐい引き込まれる。役者もそれを切り取る監督もうまいなー、すごいなーって思う。

それにしても、ワイングラスを割っちゃったらまず先にグラスの破片を取り除いて、それからモップ掛けるんじゃないの? そしてこぼれたワインと割れたグラスを一緒くたに拭いたモップを手で絞ったら、そりゃ大けがするに決まってるのになんでそれをしちゃうんだろう? これは国民性なの? その雑さと見通しのなさにはちょっとびっくりでした。


DVDスルーするにはもったいないくらいの作品でしたが、昨今はDVDスルーだけでなく映画館で公開されずに直接配信サービスのネットフリックスで公開、という作品もものすごく増えました。
でもフィルムで撮影しなくても、劇場で公開されなくても、DVD化されなくても、映画は映画であることには変わりないんですよね。「映画」の定義はこれからもどんどん変わっていくんだろう。


ジョン・ウィック チャプター2

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John Wick: Chapter 2 (2017)


いつの間にかキアヌ・リーヴスが枯れた魅力を出す渋い男になっていました。時おり見せる無垢な瞳がまた素敵で、前作も今作もかっこいいぞ。1作目ではヘッドショット一発で敵を仕留めるのを見るのが多少抵抗あったんだけど、そのあと「エンド・オブ・ホワイトハウス」のマイク・バニング見たらだいぶ慣れた。バニングとジョン・ウィックが組んだらすごそうだ。

ストーリーはあるのかないのか見ててもよく分からん。そんだけガンアクションがすごかった。キアヌは銃を構える姿勢はまぁまぁかな……もう少し背中がまっすぐ伸びてもいいような。でも弾をリロードする姿は世界一かっこいいのではないかと!補てんする弾も無くなったら最後は銃そのものを敵にぶん投げるのもすごく好きです。
こういう映画にはお約束の台詞、"kill them all"も出てきて満足です。あ!あと防弾ベストならぬ防弾スーツはかっこいいな、便利だなって思いました。「キングスマン」でいうハリー・ハートの傘みたいな感じで。


あのねこの映画の何がいちばんかっこいいってルビー・ローズ演じる手話でジョン・ウィックと会話するアレスですよ!特に最後の「また会いましょう」「もちろん」はしびれました。だってアレスはもう死ぬと分かっていてジョンに「また会おう」って言ってるのよ。そしてジョンもそれを分かっていて"Sure."と返事をするなんて、もう最高かよ。

しかしラストは世界中の殺し屋たちから追われて今まで使えたコンチネンタルホテルも出禁になっちゃって、ジョンはこれからいったいどうなるんだ。逃げ切れるんだろうか?これ当然続編あるんですよね?気になって仕方ないのでぜひ続きをお願いします。



人生に乾杯!

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Konyec (2007)


年金生活で金に困ったおじいちゃんが銀行強盗をする話。途中からは妻のおばあちゃんも加担。ハンガリー映画。
主人公のおじいちゃんがユーモラスであり、昔若いころは公安警察の運転手だったという一筋縄ではいかない経歴の持ち主でもあり、そこがストーリーにピリッとしたスパイスを利かせていて、面白くもほろりとくる部分もあり、こういうの大好き。未見ですが今公開中の「ジーサンズ」にも似てるかなとも思ったし、後半は「ノッキン・オン・ヘヴンズ・ドア」(1997)に似てるなとも。

もともとさきゆきの短いお年寄り。強盗するにも開き直っちゃってて怖いものはもうありません、的なひょうひょうとした雰囲気を醸し出しているのがこの映画を重いものにしなかった勝因かな。堂々と銀行に押し入って脅し文句を言う夫に妻が惚れ直したり、彼らが同じように少ない年金で苦しい生活を強いられているお年寄りのあいだでいつのまにかヒーローになっているのも可笑しかった。


そして追われる老夫婦と追う警察の人間がどちらも男女のカップルになってて、エミルとヘディのふたりは若いころに一人息子をなくしており、ふたりを追う若い女性刑事のアギは妊娠中。エミルがちょっとだけ火遊びしたことをヘディは咎めることなく流しておしまいなんだけど、アギはが売春婦と遊んだ恋人のアンドルが許せない。この辺の対比が面白い。
人質に取ったアギを開放する際にヘディが言う「(生まれてくる子供を)大事にしてね。かけがいのないものよ」という言葉は子供を亡くした経験をしている彼女しか言えない、他の誰よりも重い言葉だと思いました。ここはほんとに泣けた……。

罪を犯して逃走劇を繰り広げたラストは悲劇になるのが多いですが、苦しい時代を生き抜いたふたりがそう簡単に自爆の最期を選ぶわけもなく。はっきりとは明かされませんでしたが、きっとふたりはあのあと海にたどりついて、海岸で手をつなぎながら水平線を眺めているはず。


ヨーロッパが舞台の映画は年代が遡れば遡るほど、東へ行けば行くほど室内が暗くなり物が少なかったり古かったりするねぇ。


暗くなるまで待って

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Wait until Dark (1967)


これすごく怖くてでもとても面白い話でした。終盤での部屋の中が真っ暗になるシーンは、本当に本当に真っ暗。画面がぜんぶ真っ黒。なにひとつ見えない。何が起こっているのかまったく分からなくて。今だったらわずかに人の陰が分かる、くらいの暗さで怖さを煽ってくるんだろうけれど、多分当時の撮影技術ではできなかったからかもしれないせいか、本当に画面が何も映ってないただの黒ってかえってめちゃくちゃ怖い。真っ暗闇の中で犯人に追い詰められた盲目の女性、スージー(オードリー・ヘプバーン)の悲鳴だけが聞こえ、彼女はどうなったの!?殺されてしまったの!?とほんとにハラハラドキドキさせられました。
目が見えない代わりに彼女の武器は音。夫の友人や警察を装って部屋に入ってきた男たちが、スージーには見えないから分からないだろうと思ってやっていたことを実は彼女は全部"お見通し"ならぬ"聴き通し"とでもいえばいいのか、どうして手すりや冷蔵庫、ブラインドの紐を掃除しているのか(男たちが自分の指紋を拭き取っていた)、なぜ冬なのに何度もブラインドを開け閉めするのか(外で見張っている仲間を確認するため)、ロート親子が同じ靴を履いているのはなぜなのか(同一人物がロート父とロート息子のふりをしているだけ)、と、彼女は鋭い聴覚だけで状況を判断するわけで。そして男たちとスージーを観客のわたしたちだけが両方見ることができる、という面白さ。スージーは見えなくて怖いけど、わたしたちは見えるから怖い。
家じゅうのライトを消して回って、犯人には見えない、分からないだろうと思ったら、家の中でたったひとつ明かりが残っていて、それは冷蔵庫の中の明かり、というのも、特別な品ではなく、どの家にも必ずある日用品ってのがまたとても親近感と恐怖感をあおってくれました。
電球を外しては床に落として割るっていうのは室内でも靴を履く生活だからできることだなーって。日本じゃ無理だ。
あと犯人たちがスージーをだますためとはいえ妙に芝居上手でちょっと可笑しかった。
オードリー・ヘプバーンのあまりにも長い睫毛はもちろん(瞬きしたらバサバサ音がしそう!)、人形を運んで殺されてしまったリサ役の俳優さんもバービー人形みたいな容姿でとってもゴージャスでした。
そしてほぼスージーの住まいの中で話が進むので、舞台を見ているような映画でもありました。というか私は今猛烈に舞台が見たい……ロンドン……ニューヨーク……。

しかしこのスージーの写真家の夫が彼女に冷たすぎやしないですか? 中途で失明した妻を叱咤激励してくれてるんだろうけれど、盲目のチャンピオンを目指すんだ、とか、いずれ俺のスタジオまでひとりで行けるようにならないと、とかさー、すごい上から目線でイラっとしちゃった。もうちょっと妻に優しくしろよって思っちゃった。


目が見えない人が主人公の映画って他にもいくつかありますが、最近だと「ドント・ブリーズ」かな? 他には「瞳が忘れない/ブリンク 」、「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」、「ブラインド・フィアー」など。探せば他にももっとありそう。目が見えないことをハートウォーミングなドラマに仕立てるかスリラーに持っていくか。私は断然後者が好み。