POI S1 Ep04

Cura Te Ipsum

新約聖書の言葉、"Medice, cura te ipsum."(医者よ、汝自身を治せ)から来ている題名は、対象者が医者であることに掛けてある
しかしたった43分の中に、対象者を助けるだけでなく、前エピの続きでカーターがスーツの男とバートネットを調査、ファスコがカルテルと揉める、リースがカルテルの件を解決、そしてファスコの上司を脅して八分署に異動させる、と複数の話が同時進行していくその情報の多さといくつもの話が複雑に編まれた縄のように絡み合う面白さは本当に脚本の妙としか言いようがない。S1、2の素晴らしさってまさしくこういう部分ですよね。そのうえキャラクターが全員魅力的ときたら、もう夢中になる以外ないだろうって思う
まだ4話目なせいか、フィンチはヘッドセットつけてるし時々敬称なしの「リース」って呼び捨て(!)してるし、リースはリースで最初と終盤は白いシャツに黒スーツだけど他は革(?)のジャケットにダークカラーのシャツだし、まだまだ細部の設定がしっかり固まっていないのも今見るととっても面白い。「初期はこんな格好してたんだ!」っていちいち驚いてしまうね
ティルマンはフィンチに「傷みを5段階で言うと?」って尋ねるのですが、これ私も入院中に薬剤師さんから同じこと聞かれました。痛みの度合いを訊ねる時の決まった言い方なんだろうか
偶然を装って近づいたティルマンに対してリースは「親しい人を亡くした」と言いますが、このエピの時点ではそれが誰の事かはまだ明かされていない
人体を薬剤で溶かして殺したり消したりするのは「ニキータ」や「ブレイキング・バッド」でも出てきましたね
夜のダイナーでメーガンを説得して彼女がキーを渡したその手をいたわるように、慰めるように握るリース。素晴らしい
八分署で使用のPCはHP社製か~
メーガンとは別件でスティルスがいなくなったことでメキシコのカルテル、トレロスから金返せと脅されているファスコ。リースからはアンドリュー・ベントンの抹消された記録をよこせと脅されているし、あちこちから板挟みのファスコがもうかわいそうでかわいそうで……(苦笑)。ちなみに外で呼び出されたファスコと話すリースの話し方や語尾の感じが若干「大脱出」の所長っぽくて好きです。髪型もかなり短いし、ダークカラーのスーツだし。カヴィーゼルは1話目を撮影→大脱出を撮影→2話以降を撮影、の順かな……?
さらにファスコはリースから「お前の変わりなんかいくらでもいるんだ」と言われる始末。おまけにトレロスに金を返すどころか彼らの所持してたコカインまで持ち去ったことで怒りを買ったリースは拉致されちゃうんだけれど。まぁそんな状況でもリースが負けるわけもなく(ほんっと初期はリース無双炸裂ですなぁ)、あっという間に自分を囲んでた4人を床に沈めた上に、それを呆気にとられて見てたファスコによくも俺を売ったな、な目線が最高だし。
あ、リースがトレロスにスペイン語で脅しをかけるのが最高に最高でした。好きなんだよねー、母国語以外の他言語を話すときのイントネーションやわずかに残るなまりなんかが! あと顔の覆いを外されてほんのわずかにため息つくリースがめちゃくちゃ色っぽい(ヘッドホンで聴くとTVから出る音よりさらに小さな音までよく拾えるのです)。は~~セクシーの塊~~~美形の権化~~~~
そのうえものすごいまつ毛お化けでもある。どうしてこんなにきれいに上向きにカールしているの……



フィンチが「バーデット」名義で住んでいる家にカーターが事情聴取に訪れますが、この家は実はS1Ep08のアーニャのアパート、S1Ep17のペドロシアン夫妻のセイフハウスとしても使われています。そして初期のフィンチの偽名は鳥の名じゃないんですねー! この辺も面白い

このエピのいちばんの見どころはやはりラストシーン。



リースは同じように座り、同じように両手を机の上に出しているのだけれど、向かいに座る相手に語る言葉は正反対のもので。
メーガンには、
真実からは逃げられない(=復讐は答えではない)
私は何を得るの? 
人生をやり直せる。過去を葬り、 人生を取り戻せ
姉はどうなるの? 
君の一部として生きる

と、素晴らしいやり取り(特に最後の「君の一部として生きる」には非常に心を打たれました)なのですが、アンドリュー・ベントンに対しては、
ひとつ訊きたい。人は変われると思うか?
変われるはず、お前も俺も 
だが人の本質は変わらない
「良心」はずっと前に失くした もう残ってもいない。でもこの場合はその方がいいだろう。俺が手を汚せは人々は救われる

Maybe it's better this way.
Maybe it's up to me to do what the good people can't.
Maybe there are no good people.
Maybe there are only good decisions.

"maybe"は確立が半々、50%の時に使う言葉。だからリースは、どっちに転んでもいいよな? みたいな問いかけを続けざまにベントンにしているわけで。そして最後、アンドリューに向かって
"Help me make a good disicion."……教えてくれ。正しい判断か
この"good"の意味合いがひじょうに興味深い。「正しい(良い)」決断を下そうとするリース。でもその「正しい」は誰にとっての判断なのか。リースはアンドリューみたいな人間は世の中からいなくなったほうがいいと考えていて、自分が手を汚せばそれが「正しい」決断。だけど善悪の面からみたらリースがすることは殺人であり、「間違った(悪い)」判断。
ベントンにとってはリースが自分を殺さないことが「正しい」決断。だから頼むからどうか殺さないでくれって懇願するのですが。
ベントンの運命は曖昧でこのエピは終わりましたが、出方しだいで人を助ける守護天使にも人の命を狩る悪魔にもなれるのがジョン・リースという人物であることが描かれました
フィンチとリースの前に番号が出てくる意味がなにがしかある丁寧な描写。そして初期のエピの中ではわたしはすごく印象に残ってけっこう好きな回です。というのは、最後ベントンは結局どうなったかはっきりは描かず、視聴者に判断を委ねる形で幕を閉じたのと、主人公は果たして目の前の男を殺したのか否か、過去3話を見る限り、リースという人物はそのどちらにもとれる人物で、でもはっきりとは描かなかったことでかえってリースはめちゃくちゃ怖い人物だと思いました。その二点において普通のドラマとちょっと違って、すごく重いけどでも見応えあるなぁという印象が強かったです


ここから下はS3~S5ラストまで激しくネタバレありの短い考察

リースは対象者に向かって、復讐してもなにも意味はない、得られるものはなにもないからやめろ、と話すことが何度もあることから、その意味をだれよりもよく分かっている人物であり、ジェシカの夫、ピーター・アーントに手を下した(と私は思ってます)のを最後に生き直そうとしてきたのだけど。繰り返し諭すようにそう語ってきたはずのリースもまた、S3Ep10ではカーターのために復讐に走ったことから、リースの中でカーターの占める割合がどれほどのものだったかと、今までのリースとはまったく逆の負の面を描いたという意味でははやりS3Ep10は全話のなかでも非常に重要なエピソードではないかと思いました。

そして、リースがメーガンに「(お姉さんは)きみの一部となって生きる」と説いたその言葉もまたとても印象に残りましたが、それはこのエピの時点でリース自身の中で亡くなったジェシカがそういう存在になっているからかな、とも思ったし、つきつめると最終話での屋上のリースは、自分が命を終えてもフィンチの中で存在し続ける、生き続けることができるから、フィンチもリースを大切に思うあまり金庫に閉じ込めたくらいだから、自分のことを忘れることなく想い続けてくれるって一点の疑いもなく信じているから、だからもうなんの憂いも迷いも心配もわだかまりもないあの笑顔なのかな、とも思いました。もしそうだとすると、あのシーンはより切ないね……。

6 years ago...

6年前の今日、2011年9月22日に「パーソン・オブ・インタレスト」の第1話がUSで放映されました。
放映当時にニューヨークのタイムズスクエアに掲げられたビルボード。

めっちゃくちゃかっこいい。





POI S1 Ep14

Wolf and Cab

冒頭が前エピの続きになってます。リースが暗闇の廃図書館内をくまなくチェックして異状ないことを確認できてからようやくフィンチがラジエータを作動させて館内の暖房を入れ、明かりを灯すのですが。あの、ちょっと待って? よくよく考えるとこの建物は回廊型になっているということはつまり入口にゲートを設けてそれに施錠することに意味はあるのかしら……? (廃図書館の見取り図についてはこちら) そういう部分はあまり冷静に考えないほうが夢があるかな……
"Only the paranoids survive."
リースってこのエピでカーターに"Miss me?"って言ってたんですね。さらにダレンから、警官じゃないならあんた誰なんだよって訊かれて「その答えは自分でも探してる」って答えてて、これ210でアニーに訊かれた時とまったく同じ答えでした。気が付かなかった! まだまだ取りこぼしてるネタがいっぱいあるなぁ
コミックブックショップの前で無料で配られたコミックの中身をパラ見した男の子が店長のウィルコックスに「これでヒーローなのか? マントも着てない」って文句を言うんだけど、ウィルコックスは「ヒーローに必要なのはマントじゃない 仲間を守り 弱い人を助ける心だ」……これはリースのことをも指している
しかしこの店長、アンドレ・ウィルコックスこそが今回の事件の黒幕なのであった。さらにウィルコックスのボスはリンチ警部なので、つまりHRとつながりがあるってことで合ってる?
S1Ep01で安ホテルに泊まったリースがお酒を飲みながらTVで見てた白黒映画は黒澤明の「七人の侍」だったし、このエピの対象者ダレンはコミックブックが好きで孫子の兵法に詳しく、部屋にもやっぱり「七人の侍」のポスターが貼ってあって(日本の侍映画は他にもいっぱいあるでしょうというツッコミは横に置いておいて)、武士道とかチャンバラ、サムライ映画のファンかと。そしてリースを「浪人」と呼び、ボスのいないサムライだ、と。本当は切腹して死なないといけないけれど、そうしない代わりに放浪しながら人助けをしてる、とダレン。それはあながち間違ってはいなくて、そもそもこのエピの原題"Wolf and Cub"は日本の漫画「子連れ狼」の英題"Lone Wolf and Cub"から来ています。一匹狼で生きているリースはまさにその「浪人」で、ダレンにとってはリースは前から理想と描くヒーローがそのまんま目の前に現れたようなもので
そんなリースに対して、ダレンは一緒に入ったダイナーで全財産を取り出してテーブルに置き、おじさんを雇いたいと懇願しますが。リースは金をしまえと言い、その中から25セント硬貨一枚だけを手に取って「これが俺の相場だ」と。もうね、これ最高ですよね。リースは通常の人よりとんでもなくずば抜けた能力の持ち主なのに、自身はその価値にまったく重きを置いていないっていう人物、めっちゃ好みなんですよ私。そしてリースは子どもにとても優しい。時にちょっと不足気味なほどに彼は語る言葉を多くは持たないけれど、弱い立場の人間にはどこまでも温かい視線を注ぐリースが本当に好きだ。まだローティーンの男の子と組んだリースが時々いたずらっ子のような目つきや得意そうな顔をするのも、こういう時しか見られなくてとても良いね



契約成立、おじさんの名前を教えてよと言われ、"Well...you can call me...'Reese'."と。101でも橋の下でフィンチがリースに"You can call me 'Finch'."と言ってたのでこれきっと「~と呼んでください」の定型文なんだろうけれど、日本語にはない言い回しだよなぁっていっつも思う
ダレンに向かって復讐にはきりがない、終わりがないことを説くリース。たとえ全世界を敵に回して復讐を遂げたとしても、その先に得るものは何もないんですよね。そのことをリースは誰よりもよく知っている
しかしフィンチはリースがダレンに協力していることを快く思っていない

リースには大型の銃火器が良く似合う



悪い笑み~




ラスト、体を張って尻を撃たれてもダレンを助けたファスコはかっこよかったね!ダレンにファスコを紹介した時のリースは「この人は……ええっと……俺の友人だ」って言い淀んでるし、ダレンからも「どう見たって汚職警官だろ」って笑われてたけれど汚名返上できたかな
そしてダレンはまだ描きかけだけど、と前置きしてリースにふたりを描いた画を渡します。未完成で渡したってことは、リースには二度と会えないってダレンは心のどこかで分かってたんだろうね
その絵を見てリースは「ありがとう。ずっと相棒が欲しかったんだ」と言いますが。この台詞、聞くたびにわたしはいつも絵本の「くまのコールテンくん」を思い出して。絵本の最後に出てくる「ぼく、ずっとともだちがほしいなあって おもってたんだ」っていう文章が毎回毎回、読み聞かせのたびに泣けて泣けて仕方ないのですが、それと同じものを感じます
ファスコが調べたフィンチの過去の記録。いちばん古いのは1976年MIT入学時から使っている名前、ハロルド・レン。それ以前は何も出てこなかった
フィンチについて疑いを持ったリースとファスコ。その瞬間、マシンの画面上の枠がリースは黄色から赤に、ファスコも白から赤に変わり、マシンから敵性ありとみなされる。で、この後に出たマシンの画面の文字なんだけど。

SYSTEM ADMINISTRATOR
SECURITY BREACHED

COURSE OF ACTION -

EVALUATING OPTIONS...

MITIGATE
SUBVERT
MONITOR

この一連の文章の意味が、調べてもさっぱり意味が分からない……誰か……助けて……

Ep12に続いてサイドストーリーはフィンチとウィルのお話
フィンチがCEOを務めるユニバーサル・ヘリテージ・インシュランスのオフィスが出てきたのはこのエピのみだったかと
フィンチは「ハロルド・レン」として保険会社に勤めてたのはいつ頃までだったんだろう。この仕事を辞めた描写や言動は本編で特に見なかったような。なんか知らんうちに仕事辞めてたんかなって感じ……
その保険会社、Universal Heritage Insurance はトップページだけですがフェイクのウェブサイトが存在します
父の遺品の中から出てきた、と言ってウィルが差し出したのは、シャンパンのコルクとペーパーナプキン。ペーパーには 2005年2月24日 の文字。わずかに動揺するフィンチ。まさかネイサンがこのふたつを大切に保管してたとはフィンチは思ってもいなかったからかな、と



さらにウィルの口からはアリシア・コーウィンの名前まで出てきて。ウィルによると、アリシアはネイサンが亡くなった1年後にNSAを退職している
ウィルはアリシア・コーウィンに会いにいき、例のコルクと日付を見せて死の真相を訊ねるのですが、アリシアもまたフィンチと同じように嘘をついた
「ハロルドおじさんも同じことを言ってた。父の親友のハロルド・レンです。ご存じない?」……ウィルはアリシアにハロルドの名を出してしまう。多分ここでアリシアは8人目の人物の名を初めて知ったかと
アリシアはハロルドが自分のことを知っていると悟って即逃げ出す。ハロルド・レンの名を出したとたんアリシアの態度が豹変したことにウィルは疑いを持たなかったのかなとは思うのですが
わたしがすごく驚いたのはアリシアの変貌っぷりで。フラッシュバックでネイサンと打ち合わせをしたり食事をしている時のアリシアは髪を後ろに結びスーツを着てすごくはつらつとした女性だったのに、逃げ回っている現在のアリシアはすごく疲れて老け込んだように見えて、最初同一人物だと分かりませんでした
結局親友が遺した一人息子、ウィル・イングラムについてはこのエピが最後でそれ以降出てくることはなかったのですが。私、ウィルは再登場すると思っていたんです。だってネイサンの息子というけっこう重要な位置にいる人物だから。ウィルは父親の死の真相を知りたくて色々調べるのですが、最終的にはアリシアとハロルドおじさんの説明に納得して、会社が傾き破産寸前だったことに失望もしていて(「破産寸前」はもちろんウソ)、真相を探るのはそこでおしまい、というわりとあっさりした結末になったので、私はえー!と驚いたしちょっと不完全燃焼というか。
ジェイソン・ボーンの受け売りではありますが「愛する人を亡くしたら人は真実を知りたくなる」ってほんとだと思うんです。だからウィルはあれでほんとに納得したのかなぁと少々疑問でもあり。それもあって実は私はS1を見ているあいだ、ウィルはまたいつか出てくるんじゃないか、出てくるに違いないと期待してたくらいでした。
多分NSAやアリシア・コーウィンのあたりはウィルではなくルート側から真実を暴くストーリーにしたかったのかな、と。だから一般人のウィルはこのエピで退場になったのかなぁと思いました。真実に近づけば近づくほど命の危険が高まるしね。ですのでたとえウィル自ら旅立たなくても、フィンチがなんらかの手を使ってウィルを真実から遠ざけるストーリー展開になっただろうな、とも
時間軸は前後しますがフィンチがダニエル・ケイシーやケイレヴ・フィップスに温かいまなざしを向けるのも、彼らと年の近いウィルを思い出させるからかな? とも今回見返してみて思いました
結局フィンチは親しい相手であるウィルに対しても、最後まで真実を話さないままだった。そのことについてフィンチは大なり小なり罪の意識を抱えているとは思う。フィンチが本当のことをあらいざらいすべて語れる相手って結局誰もいなかったんだなって。すべて抱えてひとりで生きていこうとするフィンチはリースとはまた別の種類の孤独とともにいる、寂しい人間でもある

はぁ、さらっと感想を書くだけの予定だったのがなぜこんなに長くなるのか

ここから下はこのエピ以降~最終話までのネタバレあり

フィンチとアリシア・コーウィンの関係のまとめ
2005年2月25日
NSAに所属のアリシア、ネイサンとマシン売却の契約を結び、マシンは1ドルで政府に売られる (S1Ep14)
2009年
マシンを知るのは7人のはずが「8人」とネイサンが口を滑らせ、アリシアはマシンに関わる人物に自分の知らないもうひとり (=ハロルド)がいることをなんとなく?知る (S1Ep22)
2010年9月26日
フェリー乗り場で爆破テロ、ネイサン・イングラム死去 (S2Ep22)
2010年
10月~11月頃? フィンチ、ネイサンの報復としてアリシアを爆殺しようと計画 (S4Ep17)
11月~12月頃? アリシア、モロッコに出向きCIAのマーク・スノウにオルドスでラップトップ奪還の指令を出す。スノウの部下カーラとリースがその任務を請け負う (S1Ep20)
2011年9月
アリシア、NSAを退職、ウェストバージニア州グリーンバンクに逃れる (S1Ep14)
2012年5月
対象者ヘンリー・ペックに「(マシンは)私が造った」とフィンチが告白するのを近くでアリシアが聴く (S1Ep22)
アリシア、フィンチの後をつけて廃図書館に侵入。フィンチのいる車に乗り込み話をしている最中にルートに射殺される (S1Ep23)

これで合ってるかな?

ここから先はS5ファイナルまでのネタバレあり感想

フィンチの過去を探ったファスコが言った、「やっこさんはもう自分の本当の名前を忘れちまってるかもな」はある意味真実で、ハロルドの本当の名は最後まで明かされることはありませんでした。それを言うならリースも同じで、主役ふたりの本名さえ分からずじまい、謎は謎のまま残されて終わったドラマでした
そしてこのエピでいちばん印象だったのは、ダレンの「いつかリースにも家(home)が見つかるよ」という台詞。そう言われてリースはほんのわずか、切ないような寂しげな微妙な表情を見せるのですが。このドラマでリースと"home"についてはたびたび言及されていて、213では対象者のソフィアに対して「俺の"home"はここ(=N.Y.)だ」と言い、311ではファスコから「家に帰ろう。家("home")ってのは仲間がいて仕事があるところだ」と言われてました。でも最終的にはリースの"home"は場所ではなく人、フィンチのもとだったんですね……。それほどまでにリースにとってフィンチがどんな存在だったかは、513を見れば説明などなにも必要はない


POI S1 Ep12

Legacy



冒頭でカーターとリースが落ち合ったのはLyric Diner(リリック・ダイナー)。S1Ep05のエッグ・ベネディクトのあそこです。このダイナーはいったん閉店してオーナーが変わって再開店したんだけど前とはガラッと違うメニューにしたら客足が落ちたらしく、残念ながら2016年に閉店してしまいました(いつかここを訪れてエッグスベネディクトを注文するのが夢だったのに……!)が、今もまだGoogle Mapsのこちらで店内の様子が見られます
「『撃ってごめん』って書かれたカードが売り切れてたの」……カーター刑事ならではのジョーク。そんなこと言われてるのにリースくん、カーターとやっと正面切って顔を合わせることができるようになってすごく嬉しそう
「私は警察よ ルールがある 破れないルールが」…そう言ったカーターはリースになぜ自分に正体を明かしたかを問うと、「心の舵が正しい方向を向いてる」からだと。リースがカーターの中に見出したこの点は最後まで決してブレることはなかったし、S3Ep11以降のリースの指針にもなっていると思う。カーターさんもこんな風に真正面からまっすぐの視線で言われたら、リースからの頼まれごとを断れないですよね
ところで冒頭のリース君、シャツの色が薄い紫色……?S1Ep05での雨の中判事さんの息子を助けた時の紫シャツと同じかな?
今回の対象者、アンドレア・グティエレスは青少年を専門に弁護や保釈の手続きを進める弁護士さんなのかな、と私は思ったのですが、そうするとリースのような年齢の人間の依頼はイレギュラー? そして今回のリースのカバーIDは、過去に犯罪歴があり現在は保護観察下に置かれているという状況らしく。フィンチが造ったニセの身分のデータを見ると



ジョン・フライエル
逮捕日 1984年2月1日
誕生日 1937年2月4日
逮捕時の年齢 46歳
社会保障番号 955-39-78403
逮捕時の管轄署 116分署

身体的特徴
人種 白人
性別 男性
身長 5フィート10インチ (177cm)
髪の色 白
髪質 直毛
目の色 青
傷、痣、タトゥー なし

ってなってるけどなんで誕生年が1937年?? 髪の色が白???
アンドレアの前では人畜無害な顔をするリースがまた嘘くさいというか……(笑)

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上司を訴えたいというリースにアンドレアから「その上司はどんな人?」と尋ねられれば、「人を操るのがうまく 秘密主義 俺とは気が合わない 金持ちで孤独を愛している 金があるから何とか社会生活を送れてる つまりは変人だ」と散々な評価。インカム越しに聞いてるフィンチも、へぇ、なるほどね、みたいな顔で皮肉な笑顔を浮かべます
「大丈夫、ひとはいつでもやり直せるわ」アンドレアの言葉を聞くリース。その時バックには"Mr. Reese"がほんのわずかですが流れるんだよね……この台詞は何度も出てくるので、このエピでのテーマだと思われます
「刑務所に入ったことは?」「この国ではない」……いつか回収してほしかった、リースの過去がちらりと垣間見える台詞
図書館で仕事中に襲われたアンドレアをリースはセイフハウスに連れてきますが、この部屋は結局1回限りの登場だったのかな……? そしてここにもやっぱり壁に大きな時計がかかってて、このドラマの美術担当は巨大な壁掛け時計が好きなのか!?



ラスト、アンドレアから「もっと安全な仕事についたら? 他人を命がけで救うなんて」となかば呆れたようにも言われたリースはしかし「やり直すチャンスがあると信じてるのは きみだけじゃないんだ」と言い残して彼女の前から去る

カーターとファスコ、お互い内偵を頼まれているのが同じ男(=リース)からとはまだ知らないからそれぞれ相手を疑っている

このエピのサブストーリーは、今回初めて登場したネイサン・イングラムの息子、ウィリアム(ウィル)とフィンチの関係。演じるマイケル・スタール=デヴィッドはちょっとダン・スティーヴンスに似てるね?
ウィルは父がひとりで住んでいた家に戻りますが、近々売却を検討中。よって部屋にまだ残っている荷物の整理の真っ最中。このネイサン・イングラムの自宅、カットされてしまいましたがS1Ep01でフィンチがリースに用意した家でもあります



そしてこの家の中にはなんとプールがある!どんだけ豪邸なんだ



プールに映り込む姿と背景の特徴ある形の窓が非常に美しく、これ監督だれなんだろう? と調べたらクリス・フィッシャーでした
ウィルの職業は医者。今は国境なき医師団や赤十字で働いているらしい。フィンチは父親亡き後のウィルの後見人みたいな立場なのかな……そんなフィンチ(ウィルの前ではハロルド・レン)をウィルは「ハロルドおじさん」と親し気に呼んでます
Ep10で撃たれフィンチに救われ、Ep11で「マシンなんかない。あんたがマシンだ」と言ったリースの表情は穏やかで、ふたりの関係は良い方向へと大きく変わったかに思えましたが、新たにウィルという人物が現れ、フィンチとはとても親密なのに彼については何も話さないどころか「分かってほしい、君には話せないこともある」とフィンチにすっぱりと言い切られたリース。心を開いてくれたかと思えば再び前と変わらないも同然の様子に戻り、リースはリースでフィンチとウィルの関係を疑うし。「私のガードは固いぞ」の言葉通り、命を助けたからといってフィンチはそう簡単に心は開いてくれないわけで。難しい相手でリースくん大変だね……そしてリースはファスコにフィンチの後を付けさせ、本格的にフィンチの素性を調べ始める


(もうこの人はデジタル一眼レフカメラのCMに出るべきなのでは……?)

父さんのことをもっと知りたい、父親の死の真相を調べたいと言い出したウィルに懸念を抱くフィンチ。彼がネイサンのことをさぐれば当然マシンのことや"ハロルドおじさん"の正体も暴かれるわけで、さてどうする。ウィルについてはひとつ飛んでS1Ep14でも描かれます

マシンの視点から見た廃図書館のアングルは珍しい……?


ふたりでPCを見つめるシーンはメインルームではなく隣の小部屋ってのも珍しい
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今回フィンチのネクタイがたいへんにお洒落。毎エピ毎エピ、いったいフィンチは何度お着換えしているのだろう
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POI S1 Ep15



Blue Code

このエピのアメリカでの放送日は2012年2月16日なので、S1はもう5年も前のドラマなんですね。具体的な日付を知るとぐっと時が流れた感がします。私の中ではまだまだ熱いドラマなんだけどね
警察学校を卒業後個人データを削除して潜入捜査官になるのは当然、映画「インファナル・アフェア」を思い出させるお話です。ついでに携帯をタップしてモールス信号送るシーンもあったら良かったのに、なんて思ったけどそれはS4Ep14で叶えてもらえたかな
このエピは潜入してるので珍しくほぼ全編いつものスーツ姿じゃないリース
この頃のリースはねー、後ろから殴られてもそれさえかっこよかったんですけどね!S3以降の演出はほんとダメ(泣)



"What are you, a fed or something? "
"...Something."
「あんたFBIか何かか?」
「”何か”だ」
ケイヒルに問われて答えたリースのこの"Something"がすごくいいと思うの。S2Ep10での「あなたいったい何者なの?」と訊かれたリースが「それは自分でも答えに困ってる」にも呼応してるし、実際一言では言い表せないしシリーズ通してよく出てくる"Concerned third party"の別の言い方でもある。リースとフィンチは何者か。何者でもないし、何者かでもある。彼らふたりがしていることを、曖昧だけど端的に表している言葉
車のトランクから出た後地面の上を思いっきり転がってるリースだけど、これはもし衣服に火が点いてたときのために消火するための動作なんだよね

"My lucky day."
"Your version of a lucky day is being shot and lit on fire?"
「今日はツイてる」
「撃たれて焼き殺されそうになったのに?」
の台詞と、フィンチが電話で開口一番「ケイヒルは?」って尋ねてるのにまず最初に俺の身は大丈夫だって答えてるリースが全くかみ合ってない会話ですごく可笑しい(笑)。フィンチが本当はリースのことをとても心配してたのに電話ではそれを微塵も感じさせないのもいい。この頃のフィンチはほんっとにツンツンですなぁ
しかしながら笑える台詞はこのふたつのみで、実はこのエピソードはかなり重くて。ケイヒルがずっと追ってたLOSとの取引現場に現れたのは実はCIA。麻薬の横流しで得た金をCIAが資金として使っているのをリースは既に知っていたし、実際リースが言ったように、ケイヒルが逮捕したそのCIAエージェントはすぐに保釈されるんだけど、逮捕されたことで今回の取引が表沙汰になることを避けたい本部はスノウを使ってそいつを殺してしまう。「言ったろ、敵地では気を付けろ、と」。スノウの「敵地では気を付けろ」は同じくこのエピの冒頭のフラッシュバックでも出てきます。

リースの潜入と並行して、フィンチはファスコに今回の対象者、マイケル・ケイヒルの資料を破棄させるのですが。資料は無事破棄できてケイヒルの身を守れたかと思いきや、ファスコは資料を保管している金庫に来たデヴィッドソンに見つかった上、本来なら入れない金庫室に侵入して勝手に資料を破棄したことで逮捕され、しかもデヴィッドソンはLOSの内通者だったことが分かり、ファスコは夜の雑木林に連れていかれて殺されそうに。そこを救ったのはもちろんリースなんだけど、その見返りというか、お前は悪徳警官のままでいろと強要し、さらにちょうどいい機会だ、これを機にHRに入って中を探ってこい、と。ファスコを助けてはあげたんだけど、デヴィッドソンは問答無用で射殺だし、あの醒めた視線のままでファスコに無茶ぶりを言うわけで、あぁそうだよ本来ジョン・リースはこういう情け容赦ない人間だよなって
ファスコの「俺の手は汚れたままか」の台詞は初見の時猛烈にかっこいい言い回しだと思いました。その時のファスコの表情と共にとても印象に残ったシーン

フラッシュバックは2008年。「パッケージ」を拘束中のリースがスノウから自由時間をもらって街に出ると、そこは何とニューヨーク。そして近場のバーに入ると店内のTVでオバマが大統領選挙の勝利宣言のスピーチをしているのが流れるので、2008年11月4日の夜、ということが分かるのだけど、日付や時間帯がこんなに明確に分かるシーンは珍しいのでは?そこには何かしら意味が込められているのかな、とも考えるのですがどうでしょう?
それとこのドラマでのフラッシュバックっていつも青みがかった色合いの画面なのに、なぜかこのエピとモロッコ(S1Ep20)、そしてS5Ep03は赤みのあるオレンジかかった色合いで。リースとカーラとのシーンはオレンジなのかなとも思ったんだけど、リースの初任務(S2Ep08)のプラハブダペストやそのあとのパリ(S2Ep12)、オルドス(S1Ep19)では青みがかってるしなー
バーで隣同士になった男性から出身地は?と聞かれ、「ピュアラップ、ワシントン州」と答えるリース。隣の男性とは実はピーター・アーントで、リースの元恋人・ジェシカの夫。そしてここでリースとジェシカが同郷の出身ということも分かる。私ははじめ、リースがピーターの関心を引くために嘘の出身地を言ったと思ってたんですが、S1Ep20でカーターが取り寄せたリースの経歴を見るとほんとにピュアラップって書いてあったので驚いた
ピーターはニューロシェルに新居を購入してもうすぐ引っ越すことをリースに話す
ピーターが、妻がなかなか来ないから電話してくる、といって席を外した直後、隣に現れたのはカーラ。その途端リースの顔つきが厳しいものに変わる
カーラはリースに、自分もこの仕事に就いてから初めて家に戻った時、車の中から3時間自分の家を見ていたけれど、私の見たことしたことを家族に話しても理解してもらえないと気づいた、と告白。ここは唯一カーラの過去が描かれたシーンでもあり、彼女の人間性を感じられて私はけっこう好きなシーン
そしてカーラの言う
"We are not in the dark. We are the dark."
「私たちは闇の中にいるんじゃない。私たち自身が闇なの」…「闇」はシリーズ通してリースの人生を言い表すのに常に付きまとう表現
結局ジェシカがやってくる前にバーを去ったリース。なので2006年、空港で偶然会うも、自分から別れを告げたのがリースが彼女に会った最後。ジェシカに声を掛けるどころか姿さえ見ることなく席を立ち去ったリースは何を思ったんだろうね……そしてもし会えたとしたら、いったい何を話したんだろうとも



全体的に暗いトーンのエピソードだし、ラストもすっきり爽やかな終わり方ではない。それでも話がよく練られているし人物描写も秀逸。S1、2は全てのエピソードにおいて隅々まで神経を行きわたらせ丁寧に作ってあると感じます。
S3以降に比べてS1、2が好きな理由はそれも含めてそれこそ星の数ほどあるのですが、そのひとつにフィンチがマシンから出た番号や人助けに対して、解決に至るまでの過程において頑なとも言えるほどに揺るぎない態度なのが私は猛烈に好きで。ITの知識と天才的な頭脳をフルに生かして時にはハッタリかましたりしれっと嘘をついたりと、リースが身体面で強いならフィンチは頭脳でガンガン押してくるのが最高で、それでいて時にはフィンチも現場に出て思い切ったことをするのも含めて、その絶妙なバランスがふたりのコンビネーションを見応えあるものにしているのがとてもとても良かったんだな、と改めて思う次第。だから私はS3後半以降の迷っちゃって決断できないフィンチを煮え切らない態度に思えてしまって苦手なんだなとも思った。フィンチのキャラクター自体はとても好きなんだけどね。
フィンチが人助けだと迷わないのにマシンのことになると迷ってしまうのは、自分が生みだしたものと、自分が下す決断で誰かの運命や国、ひいては世界の未来が大きく変わってしまうのを身をもって知っているから、という理由なのはもちろん分かってはいるんだけれど。主役のひとりであるフィンチには、時には揺らいでもまた本来の状態に戻ってほしいし、真ん中に一本筋の通った決してブレないものがあってほしかったな




Fever Ray 'If I Had A Heart'