ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります

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5 Flights Up (2014)


これはあたりだった!しかも「ブルックリン」(2015)から間を置かず見たことで場所と時間がつながってる感じがしてタイミングもばっちりだった。多分これ、一度でも家を買ったり売ったりした経験があるならめっちゃくちゃ分かるし笑えるし同感できる映画。
40年以上住んだアパートメントの5Fの部屋を売りに出すことになったカーヴァー夫妻が、売るのと同時にその後住む場所を買おうって決心したあたりから話のスピードが加速して面白かった。売買が同時進行ってもう気が狂いそうなくらいあれこれあれこれ考えることが山積みなうえに、面白いのはオークション形式で売り手/買い手が決まるようで、他にも買いたい人間がいれば当然駆け引きがあるのがスリリング。買いたいと思うと値段を釣り上げて何としても手に入れようとするし、もちろんほんとに手に入れられるのかと焦るし、でも動くお金はかなりの額だし、こんなの人生に何度もないことだから本当に売って/買っていいのかと決められない。その心理、よく分かる。すごくよく分かります……!そして保証金に手紙を付けるのもへぇーって感じでした。NYだしもっとドライなやり取りかと思ってたので、心情に訴えるのもありなのかぁ、と驚き。
揺れ動く夫婦の間にやり手の不動産仲介エージェントである姪のリリーがあれこれ指示を出してきてさらに話がややこしくなるし、でも最後は納得できないことに巨額のお金を払うのは納得いかない、と自分のアパートメントを売ることも、新居を買うこともやめると夫のアレックスは決めたのだけど。その判断、私は正しかったと思う。
あのね、本当に決められる時って、驚くほどスムーズに物事が進むんです。だからどんな些細なことでもなにか引っかかることがあるならそれはやめたほうがいい。今後のカーヴァー夫妻にはいつか必ず何かしらのご縁があってアパートメントが売れる日も、条件にあった新居が決まる日も必ず来るよ。これ、間違いない。

内覧会に来るいろんな人たちに呆れたり唖然としたり(内覧会めぐりが趣味って分かる、分かるよ……!)、売り時のタイミングが夫婦で違っててけんかしたり、もうほんと夫婦あるあるでそれが爆笑ですごく楽しい映画だったし、こういう大きな出来事を乗り越えたふたりの絆は強まったと思うよ。

キャストが絶妙で、カーヴァー夫妻役モーガン・フリーマンとダイアン・キートンはぴったりだった。M・フリーマンって副大統領とか補佐役が多いからこういう役柄はとても新鮮。ダイアン・キートンがNYを舞台にした映画に出るのはぴったりすぎでしょう。
そしてやり手仲介エージェントのリリーにSatCのミランダことシンシア・ニクソン。さらにカーヴァー夫妻が買おうとした部屋の仲介エージェントの、これまたリリーに負ける気しないミリアムにPOIのグレースことキャリー・プレストン。このふたりには水面下で火花散るやり取りが絶対あったに違いないと思わせる雰囲気が両人ともめちゃめちゃマッチしてて、想像するだけで可笑しかった。


それにしても、マンハッタンの部屋よりブルックリンEVなし5Fの部屋の方が相場が高いって本当にびっくり。まぁ広さとか周りの環境もあるから一概には言えないけれど。前述の映画「ブルックリン」の1950年代には、マンハッタンより安いから移民が多く住む治安もよくない地区だったのが、今じゃお洒落で地価も上がってリッチな場所へと変貌したんですね。面白いなぁ。
ウェブでNYの不動産広告をちらっと覗いてみましたが、サイト内には地域ごとの犯罪率マップもあってさすがアメリカというかNYというか。

海を見たことがないんだ (ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア)

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Knockin' on Heaven's Door (1997)


夫に薦められて視聴。ドイツ映画、全編ドイツ語。お金の単位もまだマルクの頃。

病院の検査でガンが分かったルディ、脳腫瘍と診断されたマーティン。入院した病室で隣同士になった2人。夜中にこっそり病室を抜け出しテキーラを飲みながら、海を見たことがない、と言うルディに、知ってるか?天国に行ったらみんなが海の話をするんだ。お前その仲間に入れないだろ?そして、ふたりで海へ行こう、とギャングから車を盗み、めちゃくちゃな旅がスタートするロードムービー。
ロードムービーであると同時に、ほんのりとファンタジーでもあるんだよね。あんだけみんなしてバンバン銃を撃つのに誰一人当たらないし、ギャングの親分(なんとルトガー・ハウアー!)は2人の前に現れるも、金を盗まれたのにもかかわらず彼ら2人の余命がいくばくもないことを知っていて、海を見に行くんだろう?と2人を逃がしてあげる。

そして最後、希望は叶ったんです。海を前にして、言葉がない2人。でもマーティンはそこで命が尽きる。
ラストはもちろん、この映画の題名にもなったドアーズの名曲で幕が下りる。

ふたりとも、特にルディは大人しい性格なのに、旅路の途中からどんどん行動的になって、2人ともかっこよくなっていくのが爽快!そう、私は冴えない容姿の普通の人が見違えるようにどんどん素敵になる、というストーリーが大好きで。この映画も私のストライクゾーンを直球で来ました。

眺めのいい部屋

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A Room with a View (1985)


1991年に洋画沼に落っこちたので、1980年代の英国ブームの作品をほとんど見てないんだよね。今見とかんと、もう一生見ることないかも!と思ったので、選びました。

あの時代(1907年)にけっこうはっきりしてる主人公のルーシー・ハニーチャーチ(ヘレナ・ボナム=カーター)が恋する相手は物静かな青年ジョージ(ジュリアン・サンズ)。その押しの弱さというか繊細なキャラクターの脇を固めるのが、ルーシーの婚約者セシル(ダニエル・デイ=ルイス)と、ルーシーと仲の良い弟フレディ(ルパート・グレイヴス)。変人って言われてるけれど、そんなことないけどなー、ちゃんと息子の事よく見てる、ジョージのお父さんも素敵。


「あなたは女性の事を分かってない」と婚約者に一刀両断にされるセシル。ここちょっと爆笑。あんなに「絶対誰にもしゃべりませんからね」と言っていたシャーロットが実はイタリアで仲良くなった作家エレノア(ジュディ・デンチ)に、ルーシーとジョージのキスのことをしゃべっちゃってるし!これ、どこもちょっとおかしみがあって、みんながそれぞれ嘘をついているんだけれど、最後は幸せな終わり方。題名になっている「眺めのいい部屋」って、そういうオチに持ってくるのね。小気味よいラストでした。


1985年の作品だから、そう思っても仕方がないんだけれど、とにかくキャストが、若い、若い、若いよー!ジュリアン・サンズは髪型のせいか、「クイズ・ショウ」(1994。これ映画館で観たわー)の頃のレイフ・ファインズに似てるし、ダニエル・デイ=ルイスが、他の作品に見られる、気難しかったり固い人物じゃなくて、ちょっと飄々としてて、芸術や書物は好きだけど、結婚相手には向かなかったっていう、それどーなんだ、なキャラクターだったり、さらっさらの髪でテニスしたり水浴びしたり、犬っころみたいに姉のルーシーにちょっかい出す弟にはルパート・グレイヴス!いやー、もう、この人25年後にレストレードですよ、レストレード!
ジュディ・デンチも、画面見てなくても、声聞くと、あ、デイム・デンチ様!って分かる。すごく独特の声していらっしゃいますよね、この方。

そんな、キャストもゴージャスな作品でした。はぁ、面白かった。ポスターはよく考えると思いっきりラストシーンがネタバレしてるよね。


人生一期一会 (ニューヨーク、アイ・ラブ・ユー)



New York, I Love You (2009)

「パリ、ジュテーム」より全体的に暗いトーン(夜のシーンが多いからかな?)のお話だったけれど、実は私はこちらの方が好み。人口の多い街で、ほんの一瞬の出会い(次会うことは多分ない相手)を上手に描いていたからかな。回しっ放しのビデオカメラの前で、自分の描いた画を見せて立ち去る青年(イーサン・ホーク)、同じフランス語を話す南アフリカ出身のタクシーの運転手と客、あなたの絵を描きたいと申し出た年配の画家と漢方のお店の中国人。どれもが些細なストーリーで、これといって特徴はないかも知れないけれど、映画の雰囲気が好みでした。

だからその中でもちょっとハッピーな話が光る。文句言いながらも長年連れ添った老夫婦の話。これから恋が始まる予感がする作曲家とアシスタント(ドストエフスキーの「罪と罰」を渡され、伝言は「ウィキペディアは読むな」に爆笑)。プロムに出掛けた車椅子の女の子。

そして、いちばん不思議なエピソードかつ心を打たれた、体の不自由な若いホテルマンの話。あれはもう引退して歌わなくなった歌手の幻影だったのか。彼女は一番の服を着て、お気に入りのスミレの花を持って、自殺するつもりだったんだと思う。彼女の代わりに幻影が窓から飛び降りたのではないかと。この若いホテルマンを演じたシャイア・ラブーフが素晴らしくて。カーテンの向こうに姿が消えていくシーンなんて、表現も見事。

あと個人的には夜の闇と悪事が似合う(笑)クリス・クーパーが良かったな。実は中国語解りますよ、とニヤリとするシーン。えぇいこの悪党め。

他にもキャストが豪華。うそ臭いフランス語を話すスリにヘイデン・クリステンセン。彼女をローマに連れて行こうとする頼りない(笑)彼氏にジャスティン・バーサ。ブラッドリー・クーパーやアンディ・ガルシアなどなど。いやいや、贅沢な映画だなぁ!

ペンギンはいません (南極料理人)



夫の大学の友人が第51次南極地域観測隊員(11月出発だそうです)に選ばれたり、夫の実家の近所に以前南極に行ったことがある人がいたりで、たまたま身近に南極に行ったことがある人がいて、南極ってなんだかすごく気軽に行けるような気になりますが、もちろんそんなことはありません。

で、料理。1年以上も同じメンバーで、娯楽も少なくて、帰りたくても帰れないところにいれば、毎日の食はそれはもう大きな楽しみではないでしょうか。私だったらきっと、通常の生活では気にもとめない些細な味や料理に執着しそう。


そしてあの唐揚げ。仲間が作った下手でべちょっとしてて、もちろん二度揚げなんかしてないけれど、彼には家族の味だったんだね。あそこはなんだか一緒に泣けました。

たくさんの料理が出てきたけれど、私は見ててあの中でいちばん食べたかったのは、表面だけ焼いた(と思われる)、思いっきりレアなステーキに赤ワインです。一緒に見に行った母は、伊勢エビのエビふりゃー(注:名古屋弁)だそうです。
これを見た観客に、「劇中に出てきた料理でどれを食べてみたいか」アンケートを取りたい。まじで。


堺雅人、初めて見ましたが、いやー、あの人畜無害な表情はどこから出てくるのかしら?あの笑顔…いいですね。ふふふ、でもこういう俳優さんに思いっきり悪人な役をやらせてみたい私(鬼畜)。


ちなみにこのポスターの彼、服が防寒用で着ぶくれしているせいか、この姿がペンギンに見えて仕方ない…(笑)。かわいい♪