The Weather Man (2005)
若い頃の濃いニコラス・ケイジが苦手だった私ですが、最近年を取り、アクが薄くなってきた彼はちょっと気になる存在。
この映画は日本劇場未公開ですが、ちらほらと良い噂を耳にしていた「ウェザーマン」。これこれ、こういうニコラス・ケイジを見たかったのよ。
ピュリッツァー賞受賞の偉大な父、ひいき目に見ても出来があまり良いとは言えない子どもふたりと離婚(別居かも)した妻、の板ばさみのデヴィッド(ケイジ)。その上どうも彼はタイミングが色々と悪くて、嫁とも子どもともトホホな毎日なのですが。
アーチェリーがやりたい、と言っておきながら、1回チャレンジしただけで飽きて止めてしまう娘を励ますお父さん、なケイジが好きだなぁ。こう、決して器量良しの女の子ではないけれど、デヴィッドにとっては大事な娘。たった1回の挑戦で諦めた娘を、ふがいなく思い、でも一生懸命褒めて励ましやる気を出させようとする、そんな親としての気持ちが伝わってきましたよ。
また、いつも父の前では萎縮してしまうデヴィッド。自分の仕事や人生が、決して誇れるものではないことを何よりも自分自身がよーく分かっているから、父にとって自分は出来の悪い息子、と思われているようで、期待に応えられない自分を物悲しく情けなく思う彼の気持ちがよく描かれていました。
結局、妻は他の男と再婚、娘、息子とは週末しか会えないけれど、全国ネットのニュース番組内の天気予報士の職を得、N.Y.で新しいスタートを切ったデヴィッドは、決して不幸ではなく、むしろ吹っ切れた感があって、あぁ良かったな、って素直に思えました。
可笑しかったのは、デヴィッドが勤めているビルの隣に、彼が忌み嫌うファーストフード店(マクドナルド)があること。だから彼がビルに出入りする度にマクドの看板がちらちら映るのがね、可笑しくて。
でも、父ロバートもまた、もしかしたら彼自身の父と、息子のデヴィッドとの板ばさみだったことがあるかもしれない、そう思わせるまなざしが暖かかった。たぶんデヴィッドは肩の力が入りすぎているんでしょうね。でも人生をずっと長く生きて経験のあるロバートは、孫達にどんなことがあっても、声だけは冷静に、息子に何があったのか問いただす姿勢がよかったし、
最後、余命いくばくかと知っている彼は、息子に向かい、「人生はクソだ。だがお前にはまだ時間がある」と言ったその顔が優しく、切なくなりました。
抑えた演出、淡々と繰り返されるBGM、ニコラス・ケイジ、マイケル・ケインの演技が光る1本。決して派手ではないけれど、他の方にもお薦めしたいです。