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放映決まった

"This is going to hurt"、めでたくWOWOWで放映決まってしかも4月からでこんなに早く見られるのはうれしい。とてもうれしいのだが、その邦題はどうなの……。

ベン・ウィショー主演「産婦人科医アダムの赤裸々日記」

なにも原作本の副題のほうを採用しなくても、ちゃんと「少し痛みますよ」という本題があるのに。どうして。見るけどさ。


原作、読みましたがめちゃくちゃ面白かったです。面白いからこそ、最後がとてつもなく重い。漫画「コウノドリ」がとても近い世界観かもしれない。

新聞広告

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今朝の朝刊、「アンチャーテッド」の見開き一面広告。かっこいい!
よくよく考えたらトム・ホランドの映画は「白鯨との闘い」しか見たことがないのであった。

今日は「オペレーション・ミンスミート」も始まったし来週は「ドリームプラン」も来るし、続々新作が公開されてなにより。たとえ観に行けなくてもなんだか楽しい気持ち。

コーダ あいのうた

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CODA (2021)

原題、全部大文字なので、音楽用語ではなく"Child of Deaf Adults"に重心を置いた話というのが読みとれる。
印象的なシーンが3つあって、ひとつは合唱部の教師、通称V先生から今の気持ちを表現してみるんだ、と言われたルビー(エミリア・ジョーンズ)。うまく言えない彼女はもどかしさのあと手を動かし、心の内を現して伝える。ルビーは生まれてからずっと、言葉よりも手話に重きが置かれた人生を送ってきたきたことがよく分かるシーンでした。卒業後の進路を問われて「勉強、あまり好きじゃないし」と答えていたけれど、たぶん漁に出るために3時起きで授業中は眠くてしかたないだけじゃなく、感情を言語化する機会が少なかったので成績が芳しくないのかなと思いました。
ふたつめは、合唱部のコンサート。部員のなかからデュエットに選ばれたルビーとマイルズが、ステージ上で息の合った美しい歌声を披露するのは物語のなかでもハイライトとなるシーンだけれど、ここですべての音を消して、客席に座るルビーの両親と兄、聾啞者の現実を観客につきつけてくるのは衝撃でした。頭を殴られたようなショックを受けた。
なにも聴こえない。皆が楽しんでいるものが自分たちにはわからない。周りの観客の反応を見て、どうやら娘の歌声は素晴らしいらしい、と推測するしかない。拍手やリズムのタイミングがつかめない。私たちからはそう変わりなく見えても、彼らはまったく別の世界にいることを知らしめるのにじゅうぶんな数分間でした。
そしてみっつめは、バークリー音楽大学でのオーディション。彼女が歌ったのはジョニ・ミッチェルの「青春の光と影」。入場禁止のオーディション会場の二階席にちゃっかり忍び込んで様子を見に来た家族に向かって、彼女は手話で歌詞を表現しながら歌を歌う。彼女にとってはそれがいちばん自然で普通の姿。
ルビーの人生に手話と歌、どちらも大事で切り離せないもの。なぜならそれらは家族に直結するものだから。物心ついたときから家族の通訳をつとめてきた、ヤングケアラーのルビー。でもこれからは自分の人生を送りたい。自立のときが来たのですね。両親もまた、今までずっと娘(の通訳)によって健常者とつながってきたけれど、もう手を離さないといけないときが来たことを知る。組合を立ち上げ、他の漁師の妻たちと作業をするときのジャッキーの不安そうな表情。みんなの会話に入っていけない彼女の心情が痛いほど伝わりました。
見事大学に合格し、ルビーの旅立ちを見守る両親。出発前の娘に父親がかけた言葉、"Go."(行け)。ここだけ「声」で表現されるの、猛烈に切なくて。
後半は泣きっぱなしでしたが、若者が新天地に向けて旅立って終わる物語は清々しくて、心洗われる映画でした。あまりに素敵で、この気持ちを花にたくしたくて、帰りにお花屋さん寄ったよ。

キャストがみな素晴らしくて。アカデミー賞にノミネートも納得。ルビーとデュエットの練習をするうち心を通わせるマイルズ役が、「シング・ストリート」のフェルディア・ウォルシュ=ピーロって、もうこれ以上ない最高の配役です。ルビーの才能を見出し、ルビーを熱心に指導するV先生は、もしかしたら自身が苦労してバークリーへ入学・卒業したので、才能がある生徒にはその場所にとどまらず大きく羽ばたいてほしいのかもしれない。とても熱い心を持った先生でした。演じるエウヘニオ・デルベスが素晴らしかったです。
ルビーたちの漁業仲間にケヴィン・チャップマン。あのちょっと畳みかけるような早口な話し方、ひさしぶりに、それもスクリーンで聞けて、なんだかとても嬉しかった。

観ていて「陽のあたる教室」(1995)をちょっと思いだしました。
オリジナルの「エール!」も近々見てみよう。
ルビーの自宅がとってもコージーで温かい雰囲気が素敵。先生の家はもう少しスタイリッシュで、壁の色も暗く深い色が多くておしゃれ。間取りとインテリアじっくり見て回りたい。
あ、そうだもういっこ! 娘を車で迎えに来たお父さん、大音量の音楽に合わせて手話でラップしてたよね!? あれすげぇなってなりました。


僕を育ててくれたテンダー・バー

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The Tender Bar (2021)

邦題、「僕を育ててくれた」はいらないですよね。「テンダー・バー」だけでじゅうぶんシンプルで美しい題名になりうると思うのですが。

とりたてて目立ったことは起きない地味なお話で、主人公JR(タイ・シェリダン)が大学卒業後、希望していた新聞社には就職できなかったとか、一途に思い続ける女性に9回も振られたとか、そういうのがとても良かった。そしてJRを陰ながら励まし、支える伯父さんチャーリーの存在が光るのですが、そのチャーリーを演じたベン・アフレックが素晴らしくて。彼、いつのまにこんないい演技するようになったの⁉ 表情も豊かになって、もう本当に驚いてしまった。悪いけどベンアフっつったら私の中ではいつも同じ髪型で演技もイマイチじゃん……? という存在だったのに。「アルゴ」以降、審美眼が磨かれたのか、作品のチョイスもとても良い。

幼少からの青年期までのJRの人生が彼のモノローグとともに語られるお話。そのJRを支えるチャーリー自身の背景は詳しく描かれず、それがかえって興味を惹かれて。彼はただのバーを経営する男、ではない。店の名前は"The Dickens Bar"だし、バーの後ろにあるカウンターには酒と一緒に本が詰まれ、バックヤードの扉のある棚のなかも本がぎゅうぎゅう詰め。たぶん、JRは一家ではじめて大学まで進学した子で、チャーリーも大学に行きたかったけど貧しさで行けなかったのではないかなと思いました。そう考えると、チャーリーがJRの学費を出したのもなんとなく合点がいくし、だからといって彼が過剰な期待をJRにかけているわけではないのが好ましい。
チャーリーがJRに言う、安いスコッチは飲むな、女性を大切にしろ、等のアドバイスは彼自身だけじゃなく、JRの父、つまりチャーリーの妹の夫がどうしようもない男で、こいつを反面教師にしているから出てくる助言でもあるし、世間一般からしたら結婚せず独身で実家に暮らして職業はバーテンダーって、時代も考えるとたぶん彼は負け組なんだろうけど、でもJRにとってはかっこよくて知的なおじさん。親子ではなく、でも赤の他人でもないななめの関係。ときどき親に内緒でちょっと悪いことしたりふだん自分の親は絶対行かないようなところにドライブがてら連れて行ってくれたり、「お父さん(お母さん)には内緒な」ってにやっと笑いながらちょっと多めにお小遣いくれるひと。親の知らない、目の届かないところで秘密を共有する、子どもの自分をときに大人と同じように扱ってくれる、親以外の大人。ついでにそのおじさん、普段なにで生計立ててるか謎だともっといい(笑)。
そういう存在ってその当時は自身が幼くて分かんないけど、おとなになってから、細かいことは忘れちゃったけどでもあのとき面白かったな、楽しかったなという気持ちはいつまでも心に残っていて、思い出すたびに幸せになれると思うんだ。
私にもそういう叔母さんがいたから、この映画はとても身近に感じられました。残念ながらその叔母さんは若くして亡くなってしまったけれど、一緒に遊んでもらってすごく楽しかったなぁというのはいまでもぼんやり思いだします。もうずいぶん昔のことだから、それらの思い出はだいぶ美化されてるのだろうけれど、でもそれでいいと思ってる。

チャーリーの、いつもバーに入り浸ってる友達三人もとても味があってよかったね。エンドロールに流れた、チャーリーと友人、JRの5人で海に遊びに行ったシーンは、カットされたシーンだろうけれど、たぶんあれ、途中から演技とか撮られてるのとか関係なく、みんなでわいのわいの楽しく遊んでるんじゃないかな~。見ていてこっちも楽しかった。あのエンドロールはスティーリー・ダンの"Do It Again"とともに、とってもよい。子どもを運転席に座らせて車の運転教えるのもお約束!

「最後の決闘裁判」、早く見なくちゃね。

チャーリーの愛車のキャデラック、もしかして「グリーンブック」に出てきたのと同じかなと思ったけど、型が違ってました。車の色がターコイズブルーって目をひくよね。ちなみに「グリーンブック」と同じ車は「テルマ&ルイーズ」に出てきます。

1月に見たNetflix映画

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1カ月Netflix契約して見まくりました。以下、短い感想。

・21ブリッジ
21 Bridges (2019)
チャドウィック・ボーズマン演じる刑事アンドレの誠実なキャラクターが光るお話だったけど、この先も彼がたったひとりで組織化された大きな組織に立ち向かって勝てる見こみは、たとえUSBメモリに収められた確たる証拠があっても残念ながら低いのだろうな、というラストだった。
しかし追われるふたりが早々に車を放棄して徒歩になったせいか、題名にある閉鎖された21の橋はあんまストーリーに関係なかったような気がする。

・ドント・レット・ゴー -過去からの叫び-
Don't Let Go (2019)
めちゃくちゃ「オーロラの彼方へ」だった。過去と現在がスマーフォンでの会話のみでつながるようになった明確な理由はとくになかったので、なんか知らんけど突然そうなりました、なスタートでちょっとびっくりしたけど、刑事のジャックが違う時空にいる姪のアシュレイと繋がれたのなら、彼女だけじゃなく彼女の両親も助かってほしかった。アシュレイがまだ子どもだから彼女が親をふたりとも失ったのはちょっと辛かったな。

・ミュンヘン:戦火燃ゆる前に
Munich: The Edge of War (2021)
世界を危機から救おうと必死に行動する青年ふたりの物語はときにスリリングで、でも彼らの力なんて、ほんの微々たるものでしかないかもしれないけれど、でも少しだけ、その方向を変えることができたよね。清々しいと呼ぶまでは至らないけれど、でも余韻が残る物語でした。
主人公ヒュー・レガトを演じるジョージ・マケイがまた伝令持って走ってる! てみんな言うだろうしわたしも同じこと思ったよ。というか彼、「はじまりへの旅」の長男ボゥ役の子だったんだ。全然気がつかなかったしあのころとは顔つきが全然違う。大きくなったねぇ。
レガトの親友、ポール役ヤニス・ニーヴナーはこれからめちゃくちゃ人気出そうだし、チェンバレン首相を演じたジェレミー・アイアンズが安定の色気を放ってました。このひと昔っからレイフ・ファインズをもっと廃退させた陰の雰囲気があって好き。
あと最速タイピストにして実はレガトのお守り役でもあったメンジーズを演じたアンジリ・モヒンドラが最高にかっこよかったです。


・Tinder詐欺師: 恋愛は大金を生む
The Tinder Swindler (2022)
最後に見たこれがいちばんおもしろかったです。被害者がたくさんいる話なので「面白い」というにはいささか語弊がありますが……。詐欺師の彼、あそこまで頭が回るならその才能をもっとよい方向に活かせばいいのでは? といつも思うけど、でもああいうのってもう病気なんだろうな。一生治らない。
女性から巻き上げたお金を別の女性をだますための資金にして足がつかない巧妙な手段で次から次へと大金を手にし、贅沢三昧の日々。その連鎖が切れたときが彼の人生の終わり……にはならないのが事実は小説よりも奇なり。逮捕されても出所したらまた懲りずに似たようなことして生きてるって、どんだけたくましいの。ある意味感心。
被害者の女性三人が同じ男に騙されたと気付いて結託して彼に一泡吹かせたのは痛快だったけど、でも彼女たちはいまだに多額の借金を背負ってると知って愕然。被害者なのに救済の手立てがないなんて辛すぎる。あと彼女たちにネットで心無いコメントした奴はみんなまとめて海にでも放り投げたい。

・ザ・コンサルタント
4度目の再見、かな? 見るたびにしみじみいい映画だなぁと思う次第。使われている曲もとてもよく、切なくあたたかい余韻が残ります。