水になった村

私の地元からふたつ、みっつ数えた隣の村が、徳山村でした。子どものころから、徳山村とダムの話題は身近で、ダム建設に至るまでの長い長い道のりも、私の周辺ではみんなが、「なんとなく」という程度ではあれ、普通に知っていることだったと思う。

でも、村民の暮らしを知るのはこの映画を通してが初めてでした。
映画は、ダムがどうの、という視点は特に持たなかったと思う。最後まで、徳山での暮らしをごく普通に営んだおじいちゃん、おばあちゃんの姿。もうすぐ住めない、村はじきになくなってしまう、そんなことなんてないかのように、小さい山葵はまた来年取れるように土の中に戻しておく、そのことがかえって切なくなる場面でした。

何kmも歩いて山葵、ぜんまい、ふきのとう、山芋を取ってくる暮らしをしてたおばあちゃんが、村を出た後、家の近くのスーパーで買い物をする背中が、私にはもう、ものすごく悲しくて、ダムがなかったらしなくていい暮らしをしているのだろう、と思うには十分すぎる姿でした。

徳山村に住んでいて、徳山村のことを話す人たちがいずれいなくなってしまうのは、そう遠い先の話ではないと思う。そのうち、徳山ダムにはかつて村があったことを知らない人たちばかりになってしまう時代はきっと来るだろうけれど、ダムの底には建物がまだ残っていて、そこを通った水が、かつてあった「村」の存在を下流に運んでくれたなら、と思わずにいられない。
だからこの映画の題名は、ダムに沈んだ村、とか、失われたふるさと、とかではなく、「水になった村」なのではないかな。


自分の故郷のことも思わずにはいられない映画でしたので、ちょっと感傷的な感想になってしまいましたね。


上映後「ぴあ」の出口調査隊がいらしてたので、HoV(「ヒストリー・オブ・バイオレンス」)に続いて再びアンケートに答えましたが、感想を求められても、私はうまく話せませんでした。ほんともう泣いてしまいそうで。代わりに夫が上手に話してくれたかな、と思います(夫もまた私と同郷の出身)。

公式サイト 
水になった村
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