何のために戦っているのか (グリーン・ゾーン)



Green Zone (2010)

確かな情報だというのにいつも大量破壊兵器が見つからないことに疑問を抱くMIT部隊上官のミラー(マット・デイモン)。アメリカの都合のいいようにイラクを立て直したい国防総省のパウンドストーン(グレッグ・キニア)、彼はまた自分の嘘を隠蔽したい理由もある。中東経験が長く、イラクはイラク人自身が立て直すべき、という信念を持ち、かつ疑問を持ったミラーに目をつけるCIAのブラウン(ブレンダン・グリーソン)、この3人の行動が交錯して、複雑なストーリーが展開していくのが非常に面白く、緊張感がとぎれることなく最後まで持続したのはやはりこの監督の腕でしょう!

全員が全員、自分のやっていることを正しいと思ってのことなんだけど、それは反対側から見れば押し付けでもあるワケで。だからこの映画に最初から最後まで正しい人は出てこない。

ミラーは大量破壊兵器の情報源を疑い、その疑問を解きたい一心で行動してるけれど、その疑問は解けても誰かがどうかなるわけでなく、また毎日の任務は続く。自分の国を信じられないという気持ちでいたら、じゃあいったい彼は何のために重い装備を身につけ、銃を片時も離さず戦っているんだろう?

ストーリーは、ミラーの行動が情報源に疑問を持ってるとはいえ、ちょっとそれは大丈夫なのか!?と心配になっちゃう部分もある。一市民のタレコミだけで、大物が集まっている家にいきなり侵入していいのか、とか(そういう権限をアメリカ兵や上官が持ってるのか?)、その一市民であるフレディをすぐ信用していいのか!?とか。もっと彼の真実を追いたい必死さが出てると良かったのかも。

しかし彼はまた部隊長ではあるけれど、せっかくの捕らえた証人もさらに上の権力者(この場合は国防総省)にあっさりと持ってかれちゃう。思うに「グリーン・ゾーン」は現場を知らないパウンドストーンのような人物にとっての安全地帯でもあるのかも。実際に現場で危険と隣りあわせで埃まみれになるのはミラーのような兵隊たちだから、自分は安全でしょ。

終盤の逃げるアル・ラウィ大佐とその右腕(彼の最期はかっこ良かった)、彼らを追うミラー、大佐とミラーを亡き者にしたいパウンドストーンが送り込んだ部隊の逃亡・攻防戦がそりゃあもうすごかったです。今は赤外線カメラもあればGPSもありで、逃げ切れっこない、ふたりともやられてしまうのでは?というギリギリのところが良かった。
だからミラーがやっと大佐を確保できたというのにあの幕切れ…あれもまたイラクの側面なのかもしれないけれど。ミラーの落胆はこちらにも伝わりました。

あと、情報源の信憑性を確認しないまま記事にしてる女性記者…あかんやろーあれは!仮にもウォール・ストリート・ジャーナル紙ですよ!?あれはちょっといただけませんでした。


それにしてもなんでこうアメリカは人の国に介入したがるのか。この作品はイギリス人監督が撮ったからよかったのかもしれないね。ポール・グリーングラスの初期作「ブラディ・サンデー」がとても観たいです〜。そしてこの原作本も読みたい。


イラク戦争の描き方は重厚感なら「ハート・ロッカー」の勝ち。エンターテイメント性を求めるならこの作品かな。あと、「華氏911」こそ2004年の作品だけど、この映画はもっと早く作られても良かった。旬を逃している感じ。ちょっともったいない。


マット・デイモン。今回はけっこうやられ役っていうか、ミラーは損な役回りだと思うのね。証人は持ってかれちゃう、その際に相手と揉めてぶっとばされてるし、ブラウンに指示されたことで結果追われちゃうわ、大佐を説得して証人として表に出て証言してほしいという純粋な理由で命を張ってやって来たのに、信用されずばんばん殴られてるし。あんまりそういうシーンを彼の出演作では見なかったから、新鮮でした(笑)。

正直ねぇ、最初の頃はこんなにいい俳優になるとは思わなかったです。むしろ嫌いな俳優でしたよ実は…。「戦火の勇気」「すべての美しい馬」「プライベート・ライアン」等、けっこう何本も観てるんだけど、あまりピンとこないというか、同世代のかっこいい俳優のひとり、て感じで。「リプリー」なんて、「太陽がいっぱい」のリメイクな上に、マットが本家アラン・ドロンの代わりを務まるかー!とご立腹でしたもん私(笑)。

やはりいい監督との出会いが大きいのかなぁ。私生活では今年また家族が増えるとのことで(とうとう4児の父だ!)、公私共に充実で何より。今発売のAERA(2010年5月17日号)にマットのインタビュー載ってますが、そのページの写真の表情がまたすっごくいいんだな。


音楽は…期待したほどではなかったけれど、もう一回観てきたらまた印象違ってくるかな。




グリーングラス監督とマットはぜひまた組んで素晴らしい作品を作ってほしいです!!(熱望)

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コメント

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こちらこそよろしくお願いいたします

コメントありがとうございます。もう映画を見たい一心で必死に育児してます(笑)。

あの女性記者、裏を取らずに記事を掲載って、大丈夫なんかー!?ってすごい不安でした。たとえば朝日新聞に載ってる記事が全部裏取ってないものだと考えたら、心配ですもん(笑)。

ボーン以来マットは気になる俳優さんになりました。これからも彼の作品は楽しみですね。

はじめまして!

トリみどりさん、はじめまして!
コメとトラバ、ありがとうございました。
nyanco(家内)の育児の記事にもコメント頂き、ありがとうございました。
これからも、よろしくお願いします。

ご指摘の通りで、今回のマットは結構殴られてしまう箇所が多かったですね。ボーンと違って、弱い所もあるのが逆にリアルでした。
それから、女性記者みたいに情報操作のコマとして使われてしまうのは我々も要注意ですね。

ついて行けないこともしばしばです

こちらにもコメありがとうございます。「メディアリテラシー」、同感です。

私は30代半ばですが、情報があまりにもスピーディすぎて、ついて行けないと感じることが最近増えました。そして、情報量の多さにも。さらにその信憑性となったら…自分で正しい/正しくないを選択していかないといけない世の中になったのかな。

個人的には、政治もサッカーも、外野があまりにもあれこれ勝手なことばかり言ってると感じますねぇ…。あと、すぐ結果を求めたがっているとも。そう簡単に結果出せるかっちゅーの、と思うのですが。

ネット社会のマスメディアの特徴?

>情報源の信憑性を確認しないまま記事にしてる女性記者…あかんやろーあれは!仮にもウォール・ストリート・ジャーナル紙ですよ!?

尊敬する映画ブロガーの「ノラネコさん」が仰っていたのですが、ネット社会のせいなのか我々は「情報の即時性」に慣れ過ぎてしまったと言います。

イラク戦争がらみで日本人の私が思い出すのは「邦人人質事件」です。
あの事件についての情報も全然裏トリをしないで、めちゃくちゃなことをメディアは伝えていたといいます。

ネットのせいで生き馬の目を抜くメディア界の競争がさらにスピードアップし、情報の検証をお座なりしていいるのだとしたら・・・
我々情報の受け取り手のメディアリテラシーも、かつてないほどに問われているのかもしれんせんよね。

こんにちは~

初めまして。メルさんちで私の名前を覚えてくださってたとのことで、嬉しいです♪メルさん、しばらく更新なくて寂しいですね…。

あのアクションを観られただけでも私は大満足です♪(点が甘いかな私)

マットもいじれるところもあればかっこいいところもあって、いろんな面が見られるという意味でもいい俳優さんになったと思います!

またちゃぴちゃぴさんのブログに遊びに行かせてくださいね~。

こんにちは♪

すいませんお返事が遅くなりました。

いいとこなしのマットもたまには新鮮です(笑)

あの女性記者さん、あんな嘘記事書いちゃってクビにはならなかったんですかね~。ちょっと心配してます。

TBありがとうございました!

こんばんは~♪

初めまして~♪
TB&コメありがとうございます。

題材的に色々と言われてるフシもありますが、緊張感のつづくつくりとキレのあるアクションは、満足しました。
私も、ボーンシリーズが好きで、当初はイラクもんかぁ~行けたらでいいやと思ってんですが、ボーンのコンビとなると話は別だわと思いました。ハハハ
もっと早くに公開されているべきでしたよね。おもしろさが違ったと思います。
マットのことは、すぐいじりたくなるんですが、イイ俳優になりました。(私もリプリーは…ぷんすか…でした)

こんばんは♪

トリみどりさん、初めまして~。
TB&コメントありがとうございました♪

今回のマットは、確かにイイトコなかったですね~。アクションのカッコよさに気をとられてそこまで気づかなかったです(笑)
最後のほうで、地味~に暴露してたのがわかったときは、ちょっとスッとしました(^^;)