女であり母である (フローズン・リバー)

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Frozen River (2008)

男2人が組むとバディ・ムービーになるけれど、女2人が組むと事態はそんなにシンプルには行かない。この映画の場合、目的はお金。けれど2人の環境や人種は違う。それでも一緒に仕事をすることになった背景には、レイ(メリッサ・レオ)にもライラ(ミスティ・アッパム)にも子どもがいた。そして夫は不在。

ふたりの息子がのびのび過ごせるよう、白人のレイはもっと広くて新しいトレーラーハウスを買いたい。モホーク族のライラは、亡くなった夫の母の元で養育されている1歳の息子を取り戻したい。今の状況を抜け出すためにはどうしてもお金がいる。それはどちらかというとレイの方が切羽詰っていたんだけれど。

密入国者をアメリカからカナダへ運ぶ仕事。数回目の際、イスラム系の夫婦に託されたボストンバッグを、このご時勢、爆弾かもしれない、と、凍った川の途中に置いてきてしまうレイ。実はその中に赤ん坊が入っていたと知った2人。無事かばんは見つかり、レイは、温めてあげれば大丈夫!と確信するけれど、ライラはもう死んでると諦める。ところがレイの言うとおり温めると、ちゃんと動き始める赤ん坊。それを見て何かがライラの中で変わった。

彼女はそれからちゃんと見えるようメガネを買い、ビンゴ抽選会場でまじめに働き、もう密入国の仕事はしない、としてるのに、レイは「あと1回だけ」とライラを誘う。


その「あと1回」でしくじり、警察の要請で、もうコミュニティから追放されたし、私が刑に服す、というライラの申し出に、レイはその場から逃げることになるのだけれど。

この映画の秀逸なのはここからだ。かくまってもらった家を後にし、暗闇に浮かび上がる凍った川を見つめるレイ。その時彼女は何を思ったのか。そしてレイは引き返し、ライラに「白人で前科なしの私なら、刑期は3~4ヶ月で済む」「その間に息子たちをお願い」と告げる。

レイが出頭し、不在の間、彼女はライラに自分の子ども達を託す決断をし、ライラがそれを受け入れたあの瞬間、彼女たちの間には、間違いなくかけがいのない絆があった。


パトカーで連行される間、「子どもの面倒を見てくれるあてはあるのか?」と問われ、「いる」と答えたレイ。「ベビーシッターか?」と尋ねた警官に「友達よ」と答えたレイに、もうこちらは号泣。

彼女たちの人生は、レイのトレーラーハウスの前に置いてあった古びたメリーゴーラウンドもどきのように、ゆっくりと、でもきっと、良い方向に向かっていくと思う。だってレイは、犯罪に手を染めたけれど、お金を貯めて新しいトレーラーハウスを買うという目的を達成した。女は、男が不在でも、たくましく生きて行く。

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