ナイト・マネジャー

the-night-manager-02.jpg


The Night Manager (2016)


ジョン・ル・カレ原作のスパイドラマ。見終わった印象としては、「裏切りのサーカス」をもっと引き延ばして終始ハラハラドキドキさせてくれる物語でした。すっげー緊張した!面白くて面白くて、8話中7話目からは、あと2話で終わってしまうのがもったいなくて、続きが気になるのと終わるのが嫌で寂しい気分を抱えながらの鑑賞でした。

題名は、主人公ジョナサン・パイン(トム・ヒドルストン)の職業、ホテルの夜間シフト担当のマネージャー(=The night manager)から来てます。
2011年、エジプトの高級ホテルに勤める一介の夜間マネージャー、ジョナサンがふとしたきっかけで助けた、スイートルームに滞在する客、地元のギャングの愛人ソフィー・アラカン。しかし彼女は秘密を知ったがゆえに結局ホテルの部屋で殺され、ジョナサンはいつか彼女を殺した人間を突き止め復讐を図ろうと誓うのがお話のスタートなんだけど。彼が元軍人で、父親がアイルランドでのスパイ活動(IRA?)にかかわっていたことはドラマの中でほんの少し触れられるだけなので、そこ、そこをもうちょっと詳しく説明してほしかった。よく分からなかった。
ジョナサンはその事件のあと世を忍ぶように転職した、下界とはかけ離れて山と雪に閉ざされたツェルマットのホテルに、同じように夜間勤務のマネージャーとして働いている時に、客として偶然やってきたローパー。彼の名は、ソフィー殺害の際にかかわりがあった名前ということで、彼がここでローパーに出会ったのは何かしら運命があると感じたのでしょうか。当時ソフィーをかくまうために受け取った電話番号に連絡をし、ローパーを逮捕するためのアンジェラとジョナサンが手を組み計画が始まる、というお話。

ラストでジョナサンがソフィー・アラカンの復讐を5年後、しかもまたカイロという因縁の場所に戻って見事やり遂げたことは、彼にとってソフィーについてはやっと区切りをつけることができたんじゃないかと。
しかし5年前とはいえ、自分が以前働いていた場所に違う身分で戻ってきて、しかもボスのローパーには「エジプトは初めてだ」なんて言っちゃうし、バレたらどーすんだ!とひやひやでした。

しかしこのドラマにおけるジョナサンの人生の転機って、女性の割合がだいぶ占められている気がする。人生の方向が大きく変わったのはソフィーとの出会いと彼女の死だし、諜報員として潜入した組織のボス、リチャード・ローパーの妻、ジェド(エリザベス・デヴィッキ)と寝ちゃうって、ねぇそれほんとに大丈夫なの!?ただでさえ危うい立場なのに、最初はジェドから仕掛けられたとはいえ、そこは断るところなのでは!?よけいに自らの身を危機にさらしてないかと。ちょっと簡単に恋に落ちすぎやしないか。
それを差し引いても、このジョナサン・パイン、トマス・クィンス、アンドリュー・バーチ(本名が「パイン」(松の木)だから偽名は「バーチ」(カバノキ)がいいだろ、ていうくだりは爆笑しちゃった)という人物は、非常に物腰が柔らかく丁寧で、笑顔も素敵で誰もが魅了される雰囲気を持っていて、彼の職業がホテルマンってものすごくぴったり。さらにそれをトム・ヒドルストンが演じていることで、彼をこの上なく魅力的な男性に見せることに成功している。

そしてこのドラマのもうひとりの主役はアンジェラ・バー。彼女もまた長年リチャード・ローパーを追っている身で、利害が一致したジョナサンと組んで今度こそ必ずローパーを逮捕しようと躍起になるのですが。アンジェラを演じるオリヴィア・コールマンがね、もうぱっと見すっごく普通の、年配に差し掛かったどこにでもいるような雰囲気の女性で、こういうキャスティングにイギリス映画やドラマの底力を感じるのですよ!このポジションに美女を配置してこない。アンジェラはほんとにどこにでもいるような、例えば毎朝小学生の登校時間に反射材が入ったオレンジ色のベスト着て、STOPって書かれた棒もって子供たちが横断歩道を渡るのを見守る女性って感じがすごーくするのがね!もうね、このキャスティングがトムヒに並んで私はこのドラマの成功の大部分だと思ってる。すごい、すごくいいです彼女のこの存在が。そしてなんとアンジェラは妊娠中っていう!映画「ファーゴ」を思い出します。そのアンジェラはスペインとかトルコとか、身重の身であっちこっち飛び回って大丈夫なの!?と見ながらそれも心配。なんだか心配事が多いドラマですね…(苦笑)。
ジョナサンのパートが、諜報員として身分を偽り武器商人たちの組織に潜入、という一般の人とは限りなくかけ離れた非現実的な世界なら、アンジェラのパートは、彼女がローパーを追うきっかけになった小学校の運動会での悲劇。そして、このご時世、いつどこで起こってもおかしくない、あなたや私の身にも降りかかるかもしれないテロの危機や、それに使われる武器の出どころなんかをとても現実味を帯びて、見ている者の前で描写されていると思いました。

ローパーの妻ジェド役エリザベス・デヴィッキ。ショートカットと背の高さが魅力的な女性で、ちょっと驚いたのは、キーラ・ナイトレイに似てました。
ローパーの右腕、コーコラン大佐(トム・ホランダー)。勘の良さで、ジョナサンの身を最初から最後まで疑うも、彼の策に落ちて最後は…。彼は有能なのにもかかわらず、酒癖が悪かったのともう少しうまく立ち回るべきだった。
他にも挙げたい人はたくさん。どの人物もみな見ごたえあって、素晴らしいキャスティングでした。


さてこのお話は主役がトム・ヒドルストンってことで、顔よし、見た目よし(ほんと恐ろしいほどスタイルがよくて、こんな人が世の中に本当に存在するのかと毎回目を疑う)、頭よしの才能あふれる俳優ではありますが、私は彼の作品はそんなに多く見ているわけではない。でもこのドラマの彼が今まででいちばんだった!現在、まだ30代後半ってこともあって、いつか彼が、それこそただ立っているだけで、気づかないくらいふとした表情だけで、内面から滲み出すものがもっともっとあふれてくるといいなって思いました。このドラマでのローパー役ヒュー・ローリー(凄みのある表情と演技は見てて何度もゾッとしました)と対峙しても、負けてはいない。でもだからこそ、彼の演技がいまよりさらにもう一歩、深いところへと踏み出した領域に達してほしい。そこに至るに必要なのは、これから彼が積み重ねるキャリアかもしれないし、顔に刻まれるであろう皺や、もしかしたら私生活が充実することかもしれない。それは誰にも分からないけれど、10年後あたりが非常に楽しみです。


そうそうこのドラマ、マヨルカ島(スペイン)の観光プロモーションドラマって言ってもおかしくないほどマヨルカ島が大フィーチャーでした。たいへん美しいところで海があってシーフードは絶対おいしそうで吹いてくる風も心地よさそう。他にもスイスのツェルマット、エジプトのカイロ、トルコのイスタンブールなどなど、見てて旅行気分が味わえる見所満載のドラマ。こういうのだーい好き。

はあぁ、できればもう一度頭をまっさらにしてまたこの緊張感を味わいたいと思わせるほどにいいドラマだったよ…!しかも6~8話って私にはちょうどいいな。だって最初から最後までの話の流れをちゃんと覚えていられるもの…(苦笑)。


監督はスザンネ・ビア。彼女の映画でお約束だと私が勝手に思っている、目のアップが何度も出てきました。好き好き。トムヒの目もとてもとてもきれいな青でした!




関連記事

コメント

非公開コメント