追憶と、踊りながら

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Lilting (2014)


リチャード(ベン・ウィショー)はなんとかして亡くなった恋人カイの母ジュンを助けたい、分かりあいたいという気持ちでいるんだけれど。これは難しいね……カイは母に結局カムアウトしなかったしできなかったし、しようと思っていた日に交通事故で亡くなってしまったのだけれど、母親は息子が一緒に住んでいる友人が「恋人」だと分かっていたと思うの。だからあんなにリチャードを嫌っていたのだろうし、何年過ごしても慣れることのない異国の地で、自分が理解できない言葉を話す、息子と同性の恋人。それを理解するのはとても難しいとも思う。カイは母親のことを心配していたけれど、リチャードのことも大事。愛情の板挟みになっていたのは事実だろうね。
カイと違ってリチャードはカムアウトすることに抵抗はなかったので、そのあたりもカイはリチャードには自分の悩みを理解してもらえない、という悩みもあったのかも。とてもセンシティヴなお話でもありました。
カイ側だけでなく、リチャードの家族や家庭環境も描写してほしかったなと思いました。例えばリチャードの家族は彼のセクシャリティに対して異論はないのかとか、親との関係は良好なのか否か、とかね。

リチャードが雇った通訳のヴァンも、通訳が本業ではないから、リチャードが言ってないことを勝手に推し量ってジュンに伝えてしまったりと、ちょっとやらかしてもいるのだけれど、意外にもリチャードとヴァンの関係は良好で。
私がいちばん好きだったのは、始めの頃のリチャードは自分が言ったことをヴァンに「今のは訳さないで」と頼んでた。自分の気持ちに自信がないというか、カイとの関係をはっきり言ってないことに後ろめたさがあったんだろうと思うのですが、それが後半で、ジュンと口論のような会話になってきて、でもリチャードははっきりと自分の気持ちを伝えて、ヴァンには「今のちゃんと訳して」と、本音が言えるようになったことでした。心境の変化が通訳する/しないで表されるのがとてもよかったの。

ラストはこの先は少しずつリチャードとジュンの関係は良好なものにはなっていくのかなとも思いつつ、言ってしまえば彼ら二人のつながりはカイとリチャードの間に婚姻関係こそ結ばれていないけれど嫁と姑の間柄だもんなぁ。難しいよねぇ。唯一の共通点であるカイは亡くなってしまっているのだし。
同じ人間を愛しているのに、その愛は違う方向から向けられたばかりにリチャードとジュンが憎しみ合うのはひどく奇妙ではある。でも一筋縄ではいかなかったり簡単にことが進まないのが愛でもあるよね。


この映画のベン・ウィショーは、彼の持ち味が120%全開でした!詩的で繊細で見せる涙までもがとにかく何もかも美しくて、線が細い体をくしゃっとしたシャツで包んで立つ姿は私の乏しい語彙では魅力的としか言えないんだけどこう、セクシーさが漂ってですね、それでいて透明感に溢れていて。あぁあなんて言えばいいの!(ちょっと落ち着こう)
久しぶりにウィショーくんの演技を見ることができてすごく幸せでした。もっと彼の映画見ないと……「パディントン」も早く見ないと……!

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