コーチ・ラドスール 無敵と呼ばれた男 再見

When the Game Stands Tall (2014)

二度目に見て気付いたことを調べてみたら驚きの事実が色々出てきてびっくりだったので覚書。

初見時は、ずいぶん宗教色の強い話だなぁとは思ったけれど(そして後述するように実際その通りでもあったのですが)、私は主人公のラドスールコーチの言葉はどれもけっこう好きなんですよ。こう、胸にすとんと落ちるというか、大事なものは連勝じゃなくて他のことだよってのを色んな言葉で伝えてくれたのが大きくて。こんなコーチの元でアメフトできた生徒はすごく幸せだったと思うの。
で、私は初見時このコーチはチームに必要な信念を聖書の内容やキリスト教の教えを使って説いている人物、つまりあくまで個人的に熱心なキリスト教信者だと思ってたんですよ。だけど、高校の中庭に十字架が建てられてるシーンがチラッと映って、あれ?と思って。もしかしてここはキリスト系の学校なのか?
で、調べたらやっぱりデ・ラ・サール高校は、ローマンカトリック系の男子私立高校で、生徒の99%が大学に進学するプレップスクール(大学進学に重きを置く進学校)とのこと。なのでたぶん生徒はみなさんそうとう頭いいだろうし、Wikiには School fees(年間の学費)…$16,800 ってあるので裕福な家庭でないと通えないよね。スパルタンズみたいな強豪チームであればあるほど遠征試合とかでさらなる金額が必要だろうし。まぁこれは日本の高校の部活でも同じだけど。
ただ、父親はもうおらず、母親も病気で亡くして残された弟を養なわなければいけないキャムは、奨学金が約束されているオレゴン大学への進学を決心したけれど彼の家は明らかに低所得ではあるので、おそらくキャムはデ・ラ・サール高校へもフットボールの腕を見込まれて奨学金を得て進学したのかな、とは思うのですが。住んでいる家の場所も高校からとても遠そうだったし。実際他校のコーチが、デ・ラ・サール高校が強いのは奨学金で優秀な選手を集めているからだ、そうでなければなんでうちの学区に住んでるのに1時間もかけてデ・ラ・サールに通うんだ、って怒ってるシーンがあったし。この辺もやはり日本の高校野球と非常によく似てるかな。ただ、咎められたラドスールは、運動部の生徒に奨学金を出すのは禁じている、とも言ってるんだよね。
テレンス・ケリー(TK)の父親は名前の刺繡が入った作業着を着てるから、おそらく清掃とか力仕事の類の仕事についていることは間違いないし、クリス・ライアンの父親は車のセールスマン。どのくらいの収入があると安心してアメリカの私立高校に通えるんだろ?

ちょっと話が脱線してしまいました。
デ・ラ・サール高校のテーマカラーは白、シルバー、緑。だからアメフトチーム、スパルタンズのユニフォームやコーチ、スタッフが着る服は緑や白なんですね。
"Les Hommes De Foi"。これは映画の中で撃たれて亡くなったTKを忍ぶ横断幕に書かれていた一文なんだけど、なんでフランス語と英語の両方で表記され、なぜ「信念の男」と書かれてるのかまったく意味が分からなかったんだけど、これはデ・ラ・サール高校の校訓なんですねー。そしてフランス語で書かれた理由は、高校の名がフランス人カトリックの聖人、Jean-Baptiste de La Salle(ジャン=バティスト・ド・ラ・サール)に由来しているからなのです。ド・ラ・サールは高貴な身分の人々だけでなく平民にも教育の必要性を説き、亡くなった後は教育者の保護聖人になったとのこと。あーあーあーだからかー、なるほどねー、と頷くばかりです。

そのド・ラ・サールから派生したラ・サール会が設立した学校が日本にも2校あって、もうここまで言えば分かるかなとは思いますが、それがラ・サール高校です。高校生クイズの出場常連校と言えばいいかしら?初めて聞いたときは変わった名前の学校だなーって思ってましたが由来が分かってすっごい納得。1本のアメリカ映画が日本の高校にまでつながるとは思わなかったので驚きでした。
こんだけ色々情報を得てから見るとこれはフットボールをテーマにしたスポーツ映画ではないことがよーく分かります。普通ならコーチが心臓発作で倒れるエピは中盤に持ってきてもいいくらいなのに、前半であっさり出してるのもそれが理由かと。つまりはっきり言えばずばり宗教がテーマの映画です。
まぁそれを抜きにしても熱いメッセージの映画ではありますが、ここまで上記のような条件が揃ってたら、そりゃこの仕事をジム・カヴィーゼルが受けないわけないよねっていう(カヴィーゼルは超がつくほどばりばりに敬虔なカトリック教徒です)。

話を戻すと、ということはこの学校の先生やスタッフはみんなカトリックなのかな。ラドスールもコーチ業だけじゃなくてデ・ラ・サール高校で授業も受け持つ教師……だよね?校内の廊下を歩いてたし。何を教えてるんだろ?国語とか神学とか?そもそもLadoceurという苗字からいってフランス系かなとは思うのですが、その辺は調べても出てこなかった。まぁ個人情報なので出てこなくてもいいかなとも思いますが。
ラドスールは2013年にコーチ業を引退しているので、それを待って2014年にこの映画が公開されたのかな、とも。さすがに現役の高校フットボールコーチが映画化って、学校とその周辺にそれなりに影響があるものねぇ。

あとは映画の感想をちょこっと。
ラドスールはことあるごとに、信念や助け合い、愛、この先社会に出て生きていくために必要なこと、周りから信頼される人物になれ、と説くんだけど、周りはスパルタンズにとにかく連勝することしか求めてなくて。いったん負けて、また勝ち始めたけどまだ2勝しかしてないのに、もう前回の記録151勝を打ち破れって大騒ぎしている街のひとたち。応援はありがたいけど期待はプレッシャーでしかなく。
生徒は生徒で、ティーンエイジャーという「今」しか見えてない年頃。強豪チームだからマスコミも押しかけるし当然女の子からはモテるし、いろんな世界を知って若者の将来は何が大切か、必要かを知っている成人したコーチが伝えたいと思うことはなかなか伝わらないわけです。自身も心臓を患って健康に不安もあるし、終盤、はー、なんかちょっと疲れたなー、もう大学のコーチのオファー受けちゃおっかなー、なラドスールには思わず同情してしまいました。自分の歳はどんどん上がっていくのに、接する生徒は永遠に15~19歳の子ばかりだもの。そりゃ疲れも出ますよね。
だから最後はタッチダウンの新記録を余裕で打ち立てるチャンスがあるのに、試合の勝利をコーチに捧げる方を取ったクリス・ライアンの姿に、教え子たちはちゃんと分かっててくれたんだな、とラドスールは救われたと思いますよ。

あと、字幕では「コーチ」とか「ラドスールコーチ」って出るけど、原語では頻繁に"Coach Lad"って呼ばれてるんですよ。日本語とは逆で英語はまず役職名が先に来るんだけど、「コーチ・ラド」ていう呼ばれ方、なんかすごく可愛くない?そう思うのは私だけ?
それと吹替ではラドスールを滝さんが演じているのでこれも一度見て(聞いて)みたいなとは思ってます。


Wikipedia - De La Salle High School (Concord, California)

Wikipedia - Jean-Baptiste de La Salle

ウィキペディア - ジャン=バティスト・ド・ラ・サール



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