ブルックリン


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Brooklyn (2015)


ただただみずみずしいの一言に尽きる。そしてそのみずみずしさは全てシアーシャ・ローナンによってもたらされているのと、映画全体のトーンが最初から最後まで落ち着いた静かな川面みたいな雰囲気で保たれた、時折美術館で一枚の大きな絵画を見ているような、そんな気持ちになる映画。
舞台がNYだから、もっと大都会で忙しくて落ち着きのない感じにして、後半のアイルランドのパートと対比する演出になりそうなものなのに、NYもアイルランドも同じトーンで描かれたのがこの映画でいちばん素晴らしい部分だと思った。

アイルランドの、おろさく職もそうなく全体が貧しい小さな町のグロサリーストアで働く女性(16~18歳くらいかな?)、エイリシュ。彼女がチャンスを得たのは、姉の知り合いでNYに住む神父の勧めで海を渡りNYへと向かうのですが。寮に入り、友人ができ、デパートで店員として働き、もっと可能性を広げたいと姉のように簿記の資格を取るため夜間の学校へ通い、と、一歩一歩、小さな歩みだけれど、エイリシュの人生は前へ前へと進んでいって、順調かと思ったその矢先の姉の死。ホームシックになり、姉から届く手紙を抱きしめてベッドの上で泣いてたエイリシュが、段々NYでの日々に馴染んでいったのと比例するかのように、姉の人生は、周りに隠していた持病によってある日突然亡くなってしまったのは、どれだけエイリシュにとって辛いことか。きっと彼女は、いつかお姉さんにNYに遊びに来てほしい、姉にいろんなところを案内したい、とか、アイルランドに帰ったら話したいことがたくさんあるとか、未来や夢がたくさん詰まったことを考えてたと思うのです。そして姉も、たったひとりで旅立った先の新天地で頑張っている妹をずっと応援してたと思うのです。これは本当に辛い……。もうね、最初の方、荷造りをする妹に、もっと素敵な服を用意してあげれば良かった、というお姉さん。そして、あなたのためなら何でも買ってやりたい。でも未来を買ってあげることはできないの、の一言が私はこれでもかというほど突き刺さりました。もう泣けて泣けて。姉は家に残り、母親とふたりきりで過ごす人生。アイルランドを出ることもないだろうと思うと、泣ける以外何があるっていうの。

後半で周りから引き留められてなかなかNYに戻れない、しかも戻る前にトニーと結婚していることを秘密にしているから、これどうなるんだろう、このまま永遠にエイリシュが戻れないまま悲劇で終わるのだろうか!?とハラハラしながら見てましたが、良かった、彼女はちゃんと自分の人生を歩んでいく終わり方でした。そもそもエイリシュは本当にきちんとしているというか、これと決めた道を他人と比較することなくまっすぐに進む女性像で、私はそれが見てて気持ちよかったんだと思う。すがすがしい人生を歩む彼女が、とても好きになったからこの映画が素晴らしいと思えたのね、きっと。

彼女と出会って恋をするトニーもとても好人物で。彼もまたまっすぐな考えの持ち主。だからトニーとエイリシュのふたりって、当時はそれが当たり前なのかもしれないけれど、若くして結婚してるけど、全然不安定だったり心配な部分がなくて。あぁ絶対いい家庭築いていけるなって安心して見ていられるカップルでした。


アイルランドに戻ったエイリシュに好意を寄せるジム・ファレル役にドーナル・グリーソン。いつもの赤毛じゃないから最初気付かなかった。

あとね、この時代にNYに住んでいる未婚の女性は、寮に入る風潮だったんでしょうか?ドラマ「エージェント・カーター」のペギーもそうだったし、デパートの店員がステイタスのある仕事で、美しく姿勢よく、丁寧な接客をする様子は「リリーのすべて」でも見たし、ちょっと不思議な感じでした。「キャロル」でもそうだと聞いたので、近々見てみたいです。


あーそれにしても去年NYであったシアーシャ・ローナンの舞台「るつぼ」、観たかったな~。思い立ったらプライベートジェットに家族全員乗せて好きな行先に飛び立てて毎食お料理出してくれるホテルとかアパートメントに泊まって好きなだけ観光と映画と観劇できるお金がほしいぜ。

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コメント

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こんばんは~♪

こんばんは。いつもお世話になっております♪
やっとこさPC開いてぼちぼちアホな記事を再開させました…

で、どちらにコメントさせていただこうと思って眺めていて、いやーん、ブルックリンだ~~と。
去年見た映画のなかでは個人的にベスト5に入りますわ。すごく好きな作品でした。

そう、あのお姉さん。決して自分はアイルランドを出ることはない、とわかりつつ、私の分まで世界をみてきて!愛してる!!って妹を心から応援していてほんと涙涙でしたわ~(T_T)

>NYもアイルランドも同じトーンで描かれたのがこの映画でいちばん素晴らしい部分だと思った。

なるほど確かに!!って膝を打ちました。風景は違っても、トーンは同じでしたもんね。
あぁ、再見したい。

下宿事情、あの時代の一般的な流れだったんでしょうか。

来週こそはトレスポ2観に行かなくては!!
またお邪魔させていただきますね。

おはようございます~♪

お久しぶりです!コメントありがとうございます。
そうなんです、NYが舞台だからもっとざわついてアグレッシブな描写でもいいはずなのに、すごーく落ち着いたトーンで描かれてて、ブルックリンのレンガ造りの建物の深い茶色と相まってとても静かな雰囲気の映画で、主人公エイリシュのただずまいに非常にマッチしていたのが素晴らしかったの!
そしてエイリシュのお姉さん。もう涙を禁じ得ない……彼女の妹に対する想いは無償の愛でした。

ここ最近やたらとNYを舞台にした映画を見てますが、どれもみな素敵な話ばかりで偶然ではあるかもしれないけれど、至福のひと時です。