ハウス・オブ・カード シーズン3

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House of Cards Season 3 (2016)


友人のご厚意でS3のDVDを貸していただきました。
フランク・アンダーウッドと妻クレアの関係が、フランクの伝記を書くことになった作家トーマス・イェイツによって今まで見て見ぬふりをしてきた負の部分があぶり出され、最後にとうとう大爆発してクレアが出ていくという最高に面白いシーズンフィナーレでした。
わたし、このドラマの時の経過がちょっとよく分からない時があって、フランク対ヘザー・ダンバーの戦いは中間選挙……でいいのかな? ここにジャッキー・シャープも立候補するのは、え、そうだっけ!?ってびっくりしたんだけどなにか見逃していたかもしれない。政治ドラマはくるくるぱーの私には難しい。でもとても面白いです。
ヘザー・ダンバー役エリザベス・マーヴェルがめちゃくちゃかっこいいですね!下ろした髪が内側に巻いたような感じなんだけど少女っぽくならず、それでいてガチっとしたいかにも政治家って雰囲気を和らげてて素敵。このドラマに出てくる女性ってみな闘志があってかっこいい。
ロシアの大統領役にラース・ミケルセンですっごくびっくりした。しかもめっちゃプーチンに激似でこれってどうなのって思うくらい似てた。

さてS3のフランクとクレアを除いたいちばんの注目株はといえば、やはりダグラス・スタンパーだと思います。S2のラストでレイチェルから頭を殴られ重傷を負ったものの、死にはしなかったけれど長期入院&リハビリが必要な体になったので、事実上ホワイトハウスの首席補佐官という任務を下ろされてしまうんですね。でもダグは現場に復帰したい。それと同時進行でレイチェルの行方を追うために前に接触したことのあるハッカーのギャビン(J・シンプソン)に国外に出る自由と引き換えにハッキング能力を持つ彼を脅してレイチェルを見つけ出させる。
現場復帰を望むダグはまずヘザーに近づき情報を提供し、スタッフになることを申し出て、そのあとヘザーを裏切り、クレアの日記の破棄を条にフランクに対して件首席補佐官に返り咲くことを求める。
一方、レイチェルは死んでた、というギャビンの報告に呆然とし、自暴自棄になるも実はそれはギャビンが自由の身を得るためについた嘘であり、実はレイチェルはまだ生きてた。この、誰もが重要なシーンで自分の身を保証したり地位を得るために出す切り札(カード)を持っているという展開が最高に痺れますね!

そしてシーズンフィナーレは、ダグがレイチェルを見つけて彼女を殺し穴に埋める終わり方でした。フランクだけじゃなく、ダグもとうとう手を汚したのかと思うとこれはかなりの衝撃でした。ダグとレイチェルの関係はとても不思議奇妙で、でもだからといってふたりが恋仲になったり関係が改善したりうまく行くとはとても思えないので(つーか、そんな安易な展開は嫌だ)、こういう決着はありかな、とものすごく納得でもありました。
このラストシーン、レイチェルとダグの心情を本当に細やかに描いてて。命乞いをするレイチェルに、彼女に好意を持つダグはいったんは逃がすんだけど、彼女と反対の方向へ車を走らせるもUターンをしてまた彼女の元へ戻る。そして次のシーンでは、死んだレイチェルを穴に埋め、上からシャベルで土をかける。
文章で書くとたったそれだけのシーンなのに、見てるこちらはダグの迷いや決断はいかばかりだったかとおおいに想像をあおられる素晴らしい場面だったし、演じるマイケル・ケリーがもう大絶賛な演技で、私の中でただ今マイケル・ケリーが大ブレイク中である。レイチェルを失ったと知った瞬間の表情が最高でした。


さてこのドラマの感想を書くことは、イコール主役のケヴィン・スペイシーの問題にも触れないといけないとも思いますので、そのことについて少し。
お借りしたDVDには特典映像がふたつ入っていて、そちらもとても楽しみました。ひとつのドラマを作り上げるのに、大勢の人が関わり、皆でいいものを作り上げようとする心意気がとても伝わってきた、よい特典映像でした。
私たちがTVで目にするのは演じる俳優さんだけだけど、その後ろには決してTVに映ることのない、たくさんのスタッフがいるのですね。だけどそういう努力や心意気を主役を演じる俳優が自分の身勝手な行為ですべてを台無しにしただけでなく、彼がしたことで肉体的にも精神的にも傷ついたスタッフがいたというのはとうてい許せることではない。
映画やドラマが出来上がる過程において、その中の誰かが、それがたとえ新人女優であろうと裏方であろうと、傷つけられたり精神的に追い詰められたリすることは、一度もあってはならないのです。辛い思いや嫌な目に遭ったことを言えない人たちがいるままで出来上がった映画やドラマなんて、たとえそれが傑作であっても、被害に遭った人たちにはなんの意味もなさないのです。今までもこれからも、こんなことはもう二度と起きてはいけない。心からそう思います。

スペイシーの件でこのドラマは今年放映予定のS6で終了が決まり、スペイシーはもちろん降ろされ、主役はクレアになるとのことです。そして一時期はダグ・スタンパーやトム・ハンマーシュミット、レイモンド・タスクらが出るスピン・オフの企画(記事はこちら)もありましたが、想像以上に問題の根が深いことが分かってからはその企画自体も立ち消えになったみたいです。
私としては、S2の感想の時にダグの過去を見たいな、と書いたくらいなのでスピンオフは大歓迎だったんだけど(ついでに言うとギャビンも出してくれると嬉しいな、なんて)、ちょっと残念ではありました。
個人的にはスピンオフがなくてもワシントン・ヘラルド紙のルーカスとハンマーシュミットはまた出てくるべきだよなぁとも思っています。初期の時点でフランクの不正を暴き出した有能な彼らによって、ぜひ現職大統領を追い詰めてほしいのよね。

ところでこのドラマはPOIに出てた俳優さんが多数出演しているのもPOIファンの私には楽しみでもあるのですが(こちらの記事によると総勢12人も出演しているとのこと。すごい!)、誰が出るのかは敢えて知らないでいるので、S1でボリス・マクガイバー、S2でジミ・シンプソンの登場は驚きと嬉しさがありましたが、今回のS3では1エピのみでしたなんとカーラ様ことアニー・パリッセのゲスト出演。さらに吹替では作家トーマス・イェイツの吹替を滝さんがしてて、いったいなんなんだこのドラマは。ついでに言うとイェイツ役ポール・スパークスもPOIに1話(S2Ep16)だけ出てます。
ついつい脳内で彼らをPOIでの役柄に変換しちゃってて、ヘザーとダグのシーンはアリシア・コーウィンとマーク・スノウだし、ダグとギャビンのシーンはスノウとピアースだし、若干脳に混乱が生じてます(笑)。


円盤に印刷された画像がこれまたかっこよくて。眼鏡をかけたマイケル・ケリーがたまんねーな、っておっさんみたいな感想をこぼしてみたり。




モーツァルト・イン・ザ・ジャングル シーズン2、3

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Mozart in the Jungle Season 2 (2015)
Mozart in the Jungle Season 3 (2016)


シーズン2はほとんどが演奏家たちと経営者の対立や楽団員の私的な悩みやなんかに費やされたのでちょっと残念だった。揉め事よりも音楽を聞かせてくれよーって。なので特に感想はなしです。
数話出演の准レギュラー役のキャストに驚きでした。楽団側の弁護士役にグレッチェン・モル、ヘイリーが移籍した楽団のチェロ奏者にダーモット・マーロニー。どちらも1990~2000年代に映画で見た俳優です。

S2Ep04 エンディング
.59 - DJ Taka

続くシーズン3は前半が歌姫アレッサンドロの舞台復帰とその指揮をするロドリゴ、後半は楽団と経営側の労使交渉がようやくまとまるという展開ですが、アレッサンドロ役にモニカ・ベルッチなのには心底びっくりでした。なんかびっくりしてばかりだな、私。贅沢なドラマだ。ただ、私はオペラにほとんど興味がないので彼女とロドリゴのエピはあんまりピンとこなかったうえに、あの、みなさんどうしてそんなに簡単に寝ちゃうの!? みんな恋に落ちた相手とあっさり寝すぎじゃない!? まぁ海外ドラマって全体的にそんな感じだけどさ……登場人物にはストイックさを求めたいわたくし。
ベティが退団したことでヘイリーはついにNY交響楽団の主席オーボエ奏者になれるかと思いきや、ブラインドオーディションの結果、別の演奏者が採用されることになり。彼女がオーボエ奏者として活躍する日はいつになったら来るのでしょうか?

さてS2、3で私がいちばん好きなのは、S3Ep06でグロリアとベティが1対1で労使交渉に挑むシーン。主席オーボエ奏者のベティは
私が独身の理由、分かる? 35年間、この楽団が夫であり子供だったからだよ。旅行だって演奏絡み、冠婚葬祭は欠席した。愛する楽団のためなら 私は死ねるわ
と言うこの台詞にどれだけ心揺さぶられたか。顔には皺も染みも増えた、老後に差し掛かかりつつある年のベティがきっぱりとそう言う姿はものすごく説得力があった。これを若いおねーちゃんが言っても、ただのかっこつけたきれいごとにしか聞こえないと思うんですよ。アメリカのドラマって40代、50代、60代の女性が主役級で活躍していて、見ててすごく励まされるのです。10代、20代のときは誰だって美しい。でも年齢が上がっても、いや、歳を重ねたからこそ若い時にはない別の魅力があることを、目じりの皺やほうれい線だってあって当然の、若くなければ価値はないのではなく、本来の姿で堂々と生きていける世界であってほしいと心から思いました。

お待ちかねのシーズン4は2/16に配信開始です。ゲスト出演のマイケル・エマソンも含めて楽しみだー!

『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』シーズン4の配信日が決定!ガエル・ガルシア・ベルナルからのメッセージも到着

山手線沿いの道路をロドリゴとヘイリーが駆けっこ(?)してる!

Mozart in the Jungle Season 4 - Official Trailer [HD] | Prime Video

ところで指揮棒って英語でConductor's Baton って言うんですね! 勉強になりました。

モーツァルト・イン・ザ・ジャングル シーズン1

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Mozart in the Jungle Season 1 (2014)


つい先日「たぶん見ることはないと思う」って言って(書いて)おきながら舌の根も乾かぬうちにS1を完走しました。というのも1エピソード30分×10話ととっても短いので、たった2日間であっという間に見終わっちゃって。もっとたくさん色んなお話を見せてくれーって熱望です。早く次のシーズンを見たい。
あのね、これほんとにおもしろいのでちょっとでも興味あるかたはぜひ見てほしいな。特に過去に音楽をやっていたよ、身近に音楽をやっている人がいるよ、音楽に興味あるよ、自分も音楽をやってみたいな、などなど少しでも当てはまる要素があるならおすすめ。ほんとぜひ。
Amazonプライムオリジナルのドラマ。ということは、USのTV局で放映のドラマとは違って、来たるS4も日本にもすぐ配信されるかなと期待しています。先月札幌で撮影されたシーンは本編でどんなふうに出てくるんだろう。楽しみだなー!

実はわたし、見る前はヨーロッパが舞台でガエル・ガルシア・ベルナル演じる主人公のもとに過去の有名な音楽家が次々姿を現す中世のお話だと勝手に思ってました。いったいどこからそんな具体的な想像が!? と自分でも大笑いですが、舞台はヨーロッパでも中世でもなく現代のNYです。なんか最近見るドラマ見るドラマみんな舞台がNYなのはなぜでしょうね? 無意識に選び取ってるのか何かの呪いにかかっているとしか思えない。

ニューヨーク交響楽団の新しい指揮者に就任したロドリゴ(ガエル・ガルシア・ベルナル)を中心に話が進むのだけれど、意外にも群像劇で、オーケストラ内での内輪もめや組合の会合で話がまとまらなかったりそもそもオーケストラ自体が資金難でいかにスポンサーや寄付を募ってもらうかに必死だったり。この「資金不足」って他のドラマでもよく見られる設定だけど、世界中どの業界もながいこと不況で潤沢な予算なんてないわけで、今じゃ資金繰りに必死になるのはドラマ内で必須のエピソードって感じ……(苦笑)。
楽団内外での登場人物の人間関係や恋愛のいざこざごたごたも描かれて(むしろその割合は高い)、普段ならわたしの苦手な内容なのに面白くて見続けられるのは、常に真ん中に音楽があるからじゃないかなと思ってます。まぁ人間関係のごたごたもユーモアがあって笑えてそんなに重くならずに描かれているからかもと思いますが。
でもどんなにあれこれ揉めてもメンバーが心をひとつにして音を合わせれば、そこから生まれる音楽はなににも代えがたい素晴らしさがある。「はじまりのうた」でも書いたけど、わたしは音楽の持つ力を信じていて。だからEp06の外に出て低所得の地域に楽器を持ち込んで皆で美しいハーモニーを奏でるシーンは心揺さぶられました。このシーンは本当に素晴らしかった。なのでオーケストラの演奏シーンはもっと増やしてもらいたいな。
型破りな指揮者・ロドリゴの言動がわたしは好感度持てて、彼から目が離せない。そして演じるガエル・ガルシア・ベルナルの目がキラキラしててとても素敵! ドロドロした人間関係が描かれるのでロドリゴのキャラクターがそれと好対照なのもこのドラマの持ち味なのかもしれない。

しかしながら、実は最終話はちょっと納得いかなくて。ソリストに自分の妻、アナ・マリアをお願いしたのにその妻が公演初日のステージを私物化かつぶち壊しにするのってどうなの!? と思うし、ベティを故意に会場に来られないようにして空いたオーボエの席を新人のヘイリーが埋めるとか、引退して観客席にいた前任者のトーマス(マルコム・マクダウェル)に突然指揮を任せたりはさすがにちょっとあり得ない~。まぁこのへんはフィクションというか非現実的な盛り上げ方だと思えばいいだけなんだろうけれど。それまでのストーリーが良かったから「んんん?」となりました。

トーマス役マルコム・マクダウェルの貫禄とシンシア役サフロン・バロウズの美しさがたいへん魅力的です。

わたしはクラシックなんてまったく詳しくないし分かんないけど音楽をまたやりたいなぁという気持ちはここ数年ずっとくすぶっていて、こういうの見ると管楽器も弦楽器も挑戦してみたい~ってなります。いい加減思うだけじゃなくて現実にできるよう真面目に考えたいなと思いました。

近日中にS2、3も見る予定。楽しみ。

ウエストワールド シーズン1

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Westworld Season1 (2016)


常に思考が曖昧模糊なばりばり文系脳の人間が書くレビューなので。間違ってる部分や解釈も多数あるかと思うけれど、以下は個人の感想です。
メインストーリーは、自我に目覚めて生きる目的を探すウエストワールドのAIたち、ウエストワールドを管理する者たちの思惑や駆け引き、ドロレスと恋に落ちたウィリアムの冒険、迷路の中心を探す黒服の男、でいいかな?
高額な金を払える客だけが訪れることのできる「ウエストワールド」。そこで「ホスト」と呼ばれる登場人物たちは本物の人間ではなくAI。彼らの記憶はイベントが終了、もしくは殺された時点ですべて消去され、体に受けた傷や怪我も修復され元のまっさらな状態になってまたウエストワールドに戻される。でも彼らの記憶や経験はすべて完全には消しきれなくて、潜在意識として残っていて。特に開園当時から約35年のあいだずっとウエストワールドにいるAIたち(主にドロレス、メイヴ、テディ、ヘクター、そしてバーナード)はその記憶がたまりにたまってついに自我を持ち、外の世界を欲し、自分の存在意義を問い始める、というお話。……ざっくりすぎるあらすじ。

まずウィリアムについての感想を。職場の上司かつ友人ローガン(ベン・バーンズ)に誘われて「ウエストワールド」にやってきたウィリアム(ジミ・シンプソン)。どうやら彼はまじめできちんとした性格らしく、でもローガンから見れば面白みのないつまんない奴なので仮想空間で遊べよってことで友達のウィリアムをウエストワールドに連れてきたらしい。
ローガンはもう何回も来ているのでその面白さを友人にも体感してほしいってのもあるかな。でも実はローガンの父親の会社はウエストワールドに出資しているデロス社の社長らしく、Ep07(だったっけな)で、ウィリアムはドロレスに「現実世界では婚約者がいる。ここから戻ったら彼女と結婚するんだ」と話す。婚約者とはローガンの妹。あーつまりローガンがウエストワールドに誘ったのはバチェラーパーティーという意味もあったんですね~。
ウィリアムはウエストワールドでドロレスと恋に落ち、本当の自分を見つけたと言うのですが。ローガンに腹を刺されて逃げ、それきり姿を消したドロレスを探してウィリアムは世界の端まで行ったのに、とうとう彼女を見つけだすことはできなかった。
そのウィリアムは最終話でなんと若い時の黒服の男(エド・ハリス)だったという事実が明かされ、これには絶叫しました。つまりストーリーを時系列で並べると、ウィリアムが出てくるのは30年前、黒服の男は現在。ふたりの物語は同時進行ではなく過去と現在。これを知ってから2度目を見ると、なにもかもが意味合いが違ってきて、断然2度目の視聴のほうが面白かったです。
実は初見ではストーリーがゆっくり進むしウエストワールドを管理する人間たちのゴタゴタはさほど興味をひかれないし、意味深だけどでも意味が分からない断片的なシーンがあちこちにたくさんちりばめられていて、見ててちょっとだるかったのです。でも1~9話目は10話のための壮大な伏線でした。最終話で思いっきり頭をぶん殴られました。
その黒服の男。彼だけはウエストワールド内でなにをやってもいいし絶対に殺されない設定になっている。彼だけ無敵で最強の設定ってちょっとずるくない? と思っていたら、現実世界ではウィリアムはローガンの妹と結婚して娘もひとり授かり、おそらく実権をローガンから奪ってウエストワールドに出資するデロス社の社長(かCEO)であり大株主。だからフォードも黒服の男がウエストワールド内で好きなように振る舞えるように設定している。
最後のどんでん返しを知ってから改めて1話目から見ると、Ep01から何度も繰り返される、ドロレスが落とした缶詰を誰が拾うかなんだけど、テディ(ジェームズ・マーズデン)が拾う時もあれば、黒服の男が拾うときもあって、男はその缶詰を渡すと無言で挨拶だけして立ち去るんだけど、ここは2度目に見るととても切ない。だってそれは若い時のウィリアムと同じことをしているから。
Ep02で初めてウエストワールドに来たウイリアムは選んで、と言われて真っ白な帽子を手に取る。この「真っ白」なのが重要かと。最終話、死体の頭にかぶせてあるカウボーイハットを手に取ったウィリアム。その帽子の色は黒。ここに来たときの純真さを彼はもう失ってしまったことが帽子の色で示されてるのかと思うとなんて悲しいの。
ドロレスを探して探して世界の端までたどり着いたけどそれでも見つからなくて、始めの町に戻ってきたウィリアムはそこでとうとうドロレスを見つけるのだけれど、当のドロレスは記憶を消去されているから当然彼を覚えてなくて。この時のジミ・シンプソンの表情が本当に素晴らしかった。切なく失望を抱え、かつ呆然としたようで、でもそれを表に出さないように抑えているのを一瞬で表現していました。
しかしウィリアムとドロレスがウエストワールドの中でずっとずっとお互いを探しもとめた結果があれかよ……!
そして写真。ローガンがウィリアムに渡した妹でありウィリアムの婚約者の写真は、Ep01でドロレスの父が地面の下から見つけたものなんだけど、そうするとEp01はウィリアムたちがウエストワールドに来てドロレスを探し求めた後のエピってことになるよね?
Ep06でテディが黒服の男に語る言葉、「迷路は人の一生の集約。選択や見続けた夢の集まり。中心には何度も殺されそのたびに生き返った伝説の男がいる。最後に復活した時、激しく怒り、敵を一掃した」……これはEp09でローガンに連れてこられた連合軍の兵士たちを一晩のうちに皆殺しにしたウィリアムのことを言っているんだと思う。ウィリアムはここで本来の自分を解き放っちゃった感じかなぁ。

とまぁ私はウィリアムをメインに見ていたのでAIたちのセッションや葛藤についてはまったく深く考察していないので、あとは他の登場人物を中心に感想をいろいろと。
フォード(アンソニー・ホプキンス)。アーノルドとともにウエストワールドを設計した人物。新しいプロットを投入しようとするが、そのせいでホストが混乱。シナリオはもっと単純でいいと考えるテレサとは対立。しかしフォードはすべてを自分のコントロール下においてAIを思いのままに動かす世界のトップに君臨して神になりたいと考える人物。だからウエストワールドの世界を違う仕様にしようとする者はすべて敵だし、開園前にAIが意識を持つことに気づいたアーノルドは、ドロレスにウエストワールドを破壊するよう頼むのですが。
結局トップの座を狙うテレサがフォードを追放するのかと思いきや、デロス社からやってきたシャーロットと共謀したフォードが実はAIだったバーナードに殺されるという結末に。バーナードはフォードの命令でエルシーも殺しているから、フォードにとってはバーナードも自分が自由に動かせる駒のひとつでしかない。
しかしなんでみなさんそうやたらと神と同じ存在になりたいのか、わたしはさっぱり分からないんですけど……?
そうそう、フォードはバーナードにテレサに近づくように命令(この場合はプログラムと言うべき?)したけど、テレサには「バーナードを受け入れたのは君だ」と言う。つまり断ることもできたってこと。AIとは違い、人には自由意志があるってことを言いたかったんだと思う。自由意志かぁ……なるほどねぇ……。

バーナード(ジェフリー・ライト)。ウエストワールドを管理するデロス社の社員の中にひとりやふたりはAIが混じってるだろうと予想はできましたが、バーナードだとは思わなかった。しかもフォードはともにウエストワールドを設計したアーノルドそっくりにバーナードを造ったって最高に趣味が悪いうえ、見てるこっちのミスリードを誘いまくりでまったくいやらしい話です。
エピのオープニングでバーナードとドロレスのセッションが何度も出てくるのだけれど、青いドレスを着たドロレスと対話をしているのは実はアーノルド。裸のドロレスと対話をしているのはバーナード。私は青いドレスを着たドロレスの対話相手もバーナードだと思っていたのですが、バーナードはEp01で「ここに来て10年経つ」と言ったのと、Ep10でフォードがバーナードとドロレスに「きみたちは初めて会うな」と言ったことでやっと自分の間違いに気がついた。

テディ(テオドア)。彼はEp01で列車に乗ってウエストワールドにやって来たので客だと思ったのですが彼もAIでした。どんな登場の仕方であっても、つねにドロレスを守って最後は死ぬ設定になっている、で合ってるかな? 黒服の男は、ドロレスが外の世界に出ないように留める存在だと言っていたけど。
テディは友人で上官のワイアットとともにドロレスの故郷エスカランテで大虐殺を行ったことに対してずっと罪の意識を抱えているが、実はワイアットのシナリオをアップデートされたドロレスがテディと一緒にエスカランテのホストを全員殺しているのが真実。ワイアットという人間はいない。ホスト全員を殺したあと、ドロレスはアーノルド、テディの順に撃ち殺し、最後に自分を撃って自殺している。

ヘクター。街にやって来て人々に発砲し、メイヴのいる売春宿から金庫を盗む悪党。首に賞金がかかっているお尋ね者。演じるはロドリゴ・サントロ。LOSTに続いてJ.J.作品に出演です。

メイヴ(タンディ・ニュートン)。わたしはAIの中では彼女がいちばん好きでした。メイヴの役どころは完全に映画「エクス・マキナ」(2015)のエヴァだと思いました。ノーランはあの世界を自分流に表現したかったんだと思う。でもエヴァとは違い、ラストでメイヴは自分の向かいの席に座った母子の姿を見て、自分も記憶の中の娘を探さなければと、せっかく乗った電車を降りてしまう。彼女が逃げたことはもう知られているだろうから、この先どう行動するんだろう。やっぱりフィリックスの手を借りるのかな? 
フィリックスとシルベスターを脅してプログラムを書き替えさせ、どんどん強くたくましく賢くなっていくメイヴは見応えあった。

フィリックス(レオナルド・ナム)。相棒のシルベスターから、お前はAIの傷んだ体をもとに戻すただのブッチャーだって言われてたけど、つい同情してしまったばかりにメイヴに利用されまくってる修復担当。しかしたかがメンテのみの彼らに彼女の設定を変更できる権限があるのか? という疑問はある。上層階に簡単に出入りもできるし、修復のみしかしない人間が重要な部門のある場所にも出入りできるって、ちょっとセキュリティ甘くない? それとも彼らふたりも上級の技術者ってことなんだろうか。
ただ全編シリアスな展開の話の中でメイヴに協力することになるフィリックスは面白みがあってよかった。もうちょっと笑いをとってもいいと思ったくらい。

あとは雑感。
AIたちが取る行動、レヴェリーズはとても人間らしくて美しいなと思いました。これも後半で仕組まれたプログラムであることが分かったけれど。
そして、このドラマにも出てきた「バックドア」! またか! これって魔法の仕掛けだよね。これさえあれば、ストーリーにおいてどんな例外も許されてしまうように思うの。
バーナードの妻ローレンに「SUITS」のジェシカことジーナ・トレス。
プロデューサーのひとりにブライアン・バーク。この人の名を白文字で見るのは「LOST」、「POI」に続いて3度目だ。
よく分からなかった点は、
砂に埋もれた町、エスカランテ。ドロレスの故郷だけれど、初期では町も教会もちゃんと存在しているのに、ウィリアムと一緒に来た時は砂に埋もれていた。その理由は?
フォードがバーナードに見せた、ウエストワールドを作り上げた技術者3名の写真。フォードとアーノルド、そしてもうひとりは誰?
他にもいっぱいあるけど主に上の2点は非常に気になった。


前述のウィリアム役ジミ・シンプソン。きみ、いい役獲ったねー!! と手放しで大絶賛したい。あの純粋でドロレスとの愛を心から信じてたウィリアムが数十年後にはあんな姿になるとは誰が予想できようか。
彼がEp02に出てるのは知ってましたが、私はそのエピのみのゲスト出演だと思ってたんです。でも先日開催されたSDCCに来てたから、つまりそれってS2にも出演するってことなんだよね?てことでようやく視聴に至りましたが、すごい、出ずっぱりじゃない。共演のベン・バーンズとはとても仲が良いみたいです。
エド・ハリス。ヴィゴと共演してたウエスタンムービー「アパルーサの決闘」(2008)でもやっぱりかっこよかったですが、こちらは黒づくめの服で乗る馬も黒く、超極悪人。凄みがありました。しかしまぁアンソニー・ホプキンスやエド・ハリスがTVドラマに出演する時代になったんですねー。時代が変わったわ~ってしみじみ思っちゃった。

製作はジョナサン・ノーラン。脚本も監督もしてるから、実質彼がショーランナーと言ってもいいくらいかな? ジョナサンは今までも、兄のクリストファー・ノーランと脚本を書いた「バットマン」で出来なかったことをPOIで描き、POIで描けなかったことを今この作品で描いてるんだけど、性表現、暴力シーンの規制が緩いHBO(「SatC」や「ゲーム・オブ・スローンズ」もこの局ですね)で放映ってことで、なんというか、もうやりたい放題。窮屈だったCBSとは違い、すげーのびのびと作ってます感が画面からばしばしと伝わってきますね……(笑)。

音楽はラミン・ジャワディ。オープニングシークエンスの曲はピアノがたいへん美しい旋律です。そしてしょっぱなからEp01でローリング・ストーンズの"Paint it Black"のクラシックバージョンが最高に痺れました。Ep04のビゼーのカルメンの「ハバネラ」も素敵で、音楽の使い方うまいなーって思いながら見てたのですが、なんと最終話のラストシーンで流れたのはRadio Headの"Exit Music"のクラシックバージョン。こちらもかなりキました。だってこれ、POI S3最終話の最後のあのシーンに流れた曲じゃない! もうこちらの心がぐりぐりと抉られました。あの曲が流れたらその後に起こるのは悲劇しかない。間違いない。POI視聴済みの人間はそう刷り込まれてるもん。そしてその通り、AIたちが立ち上がって人間たちを撃って撃って殺しまくるというシーズンフィナーレでした。あーもう、やってくれたな。

Westworld Final Song "Exit Music (For a Film)" - Radiohead by Ramin Djawadi

音楽ですが、そもそもPOIの最終話(S5Ep13)の冒頭に流れたのが「エクス・マキナ」の挿入曲からして、あの時点でジョナサン・ノーランの次の作品のテーマは人口知能ですよって伏線が張られていたようなものかと。だってPOIで流れる曲は今までどれもそんなに新しいものはなかったのに、なぜあれだけは前年に公開されたばかりの映画の挿入曲だったんだろうって違和感というか、珍しいなと不思議に思っていたので。まぁ個人的かつ勝手な解釈ではありますが、私はそう考えています。


しかしこれ、シーズン2を作る必要はあるのだろうか? ある意味S1のラストはあれできれいに終わっていると思うのです。S2が壮大な蛇足になりませんようにと祈るしかない。


M・エマソンのゲスト出演ドラマ

エマさん今月お誕生日(63歳!)なので、彼がゲスト出演した作品をみっつ。

Without a Trace FBI失踪者を追え!
S1Ep19 Victory for Humanity (2005)

エマさんがゲスト出演してる回だけ視聴だったけど、メインの登場人物4人がみんな魅力的でなかなか面白かった。舞台はNY。エマソンは高校の副校長のウェスマー。同僚で友達であるはずの理科教師ジョシュが金を持っていると知って、生徒のひとりにジョシュをけしかけさせて金を巻き上げようと画策する、めっちゃ小物感ある役でした。警察の取調室でじょじょに正体が明らかになるんだけど、姑息な態度がもう最高にうまい。
自分の設立したIT会社を売却して金持ちになった教師、ジョシュ役のクリストファー・ゴーラム(読み方合ってるかな?)。容姿がくしゃくしゃの鳥の巣頭に真っ赤な唇、ひょろっとした背丈でめっちゃベン・ウィショーに似てました。


Law & Order: Special Victims Unit ロー・アンド・オーダー:性犯罪特捜班
5Ep14 Ritual (2010)

こちらも舞台はNY。ドラマのタイトルからして、えー……な案件ですが、そのドラマにゲスト出演ってことはつまりその、あれですね……と見る前から気が重かったのですが、案の定でした。しかも小児同性愛者っていちばんあかんやつやん……。なので感想も特にあげません。具体的に書くには辛すぎる。
「ブラックリスト」のミスター・キャプランことスーザン・ブロマアートが出てました。彼女は本家の「ロー&オーダー」にも何度か出てる準レギュラーのようです。
おそろしいことにこのドラマ、1999年に始まって2017年の今もS19が放映中。あの、世の中そんなに性犯罪がはびこってるんですか……? 舞台はNYですが、いったいどんな街なのよ。もう泣きたい。幻想と知っていてもNYには美しい夢を抱いていたいわたし。


Law & Order: Criminal Intent ロー・アンド・オーダー:犯罪心理捜査班 
S1Ep16 Phantom (2009)

あー、これは字幕なしの英語で見たので理解度は50%以下です。国連で働くエコノミストのジェリー・ランキン(エマソン)。でも実はそれは嘘で実態は詐欺師。でも妻と子供もふたりいる父親なうえ、家では子供たちから"Daddy, the hero"と慕われているのですが。
刑務所から出所してきた男の妹、シャーロット(カーラ・ブオノ。POIではマルティーヌ役でした!)に近づいて男が得た金を巻き上げようとする役でした。終盤は、もし自分の本当の姿が子供たちにバレたら失望させてしまう、だったら知られないまま殺した方がいいとまで思いつめてショットガンを手にするのですが。
そのジェリーを説得する捜査官、ゴーレム役のヴィンセント・ドノフリオがすっごくよかった。ドノフリオ、ドラマに出てたのですねー!
エマさんは机にちょこんと両手を置くのはもう癖ですね。しかし3作品ともまったく変わらない姿でほんとこの人歳をとらないというか年齢不詳で怖い。


てことで、すべて犯罪者役のマイケル・エマソンでした。もしかして悪役じゃないハロルド・フィンチ役だったPOIってすごく貴重なドラマだったのか? と改めて思う次第。いい人な役のエマさんはどこで見られるんや……。
と言いつつも、実は彼の出演する未見の作品で今いちばん見たいのはウィリアム・ヒンクス役でエミー賞を受賞した「ザ・プラクティス」なのですが、その回はDVD化されていないし、オンデマンドでも見つからない。それどころかUSのアマプラやiTunesで検索しても出てこない。版権の関係か、幻の作品になっちゃってるみたいで手も足も出ない状態です。どうしたら見られるのだろうか。